クラブの非常階段で、恐る恐る落語台本の選考結果発表のホームページをスマホで見た。
僕の名前はそこにはなかった。
12 年間のすべて、歯が立たなかった時、僕はお笑いの表現者として終わった気がした。
受賞していたのは、一般人だった。
僕の 12 年間は、一般人に負けた。
あれだけ必死でやって、何も動かなかった。
休憩時間が終わり、トイレチェックしに行った時、鏡に映ったのは、疲れ切ったボロボロのオッサン。何本か白髪が生えていた。
これが僕か?
あの頃、劇場で見た、芸人がお笑いをやめる時の、屍に変わる寸前の、あのすべてを諦め切った顔。鏡に映る僕の顔は、その時の顔をしていた。
ここで終わるのか?
仕方ないことなのか?
低くくぐもった気味の悪い音が聞こえる。
足元にシミができる。僕は気づくとよだれを垂らして唸っていた。
頭の中でカイブツが悲痛な声をあげている。
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