笑いのカイブツ

お笑いをやめるって、死ぬみたいな感じがする

二十七歳、ハガキ職人も辞め、ほそぼそと笑いの仕事をしながらのバイト暮らし。流れ着いたのは、大阪は難波の道頓堀川沿いにあるクラブのアルバイトでした。心を殺して働きながらも、笑いへの憧憬と葛藤が、ツチヤさんの脳裏によぎるのでした。
他を圧倒する量と質、そして「人間関係不得意」で知られる伝説のハガキ職人・ツチヤタカユキさん。その孤独にして熱狂的な笑いへの道ゆきが、いま紐解かれます。

クラブの非常階段で、恐る恐る落語台本の選考結果発表のホームページをスマホで見た。

僕の名前はそこにはなかった。

12 年間のすべて、歯が立たなかった時、僕はお笑いの表現者として終わった気がした。

受賞していたのは、一般人だった。
僕の 12 年間は、一般人に負けた。
あれだけ必死でやって、何も動かなかった。

休憩時間が終わり、トイレチェックしに行った時、鏡に映ったのは、疲れ切ったボロボロのオッサン。何本か白髪が生えていた。

これが僕か?

あの頃、劇場で見た、芸人がお笑いをやめる時の、屍に変わる寸前の、あのすべてを諦め切った顔。鏡に映る僕の顔は、その時の顔をしていた。

ここで終わるのか?
仕方ないことなのか?
低くくぐもった気味の悪い音が聞こえる。
足元にシミができる。僕は気づくとよだれを垂らして唸っていた。
頭の中でカイブツが悲痛な声をあげている。

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笑いのカイブツ

ツチヤ タカユキ
文藝春秋
2017-02-16

この連載について

初回を読む
笑いのカイブツ

ツチヤタカユキ

他を圧倒する量と質、そして「人間関係不得意」で知られる伝説のハガキ職人・ツチヤタカユキさん、二七歳、童貞、無職。その孤独にして熱狂的な笑いへの道ゆきが、いま紐解かれます。人間であることをはみ出してしまった「カイブツ」はどこへ行くのでし...もっと読む

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コメント

JustThingF ツチヤタカユキが月刊ツチヤタカユキを始めcakesに移行したのはこのためだったんだな。あの人のことも書くし、今まで書いたどのネタより自信あるって言ってた通りの内容。 https://t.co/9a2E2iFKeb でもnoteで大喜利教室はじまってるから、結局辞めない疑惑。。。 約3年前 replyretweetfavorite

416rpm 昨日泣いた記事その2。本当の絶望。私も何度も死にかけてる 約3年前 replyretweetfavorite

oimoyasann |ツチヤタカユキ|笑いのカイブツ 一体何をしたくて、どこに向かっているのか。誰しもそんな瞬間はある https://t.co/JDdL3fRFrf 約3年前 replyretweetfavorite