笑いのカイブツ

堕落者落語

二十七歳、ハガキ職人も辞め、ほそぼそと笑いの仕事をしながらのバイト暮らし。流れ着いたのは、大阪は難波の道頓堀川沿いにあるクラブのアルバイトでした。心を殺して働きながらも、笑いへの憧憬と葛藤が、ツチヤさんの脳裏によぎるのでした。
他を圧倒する量と質、そして「人間関係不得意」で知られる伝説のハガキ職人・ツチヤタカユキさん。その孤独にして熱狂的な笑いへの道ゆきが、いま紐解かれます。

アルバイト先のクラブで、 18 歳のギャル男の先輩は、 27 歳の僕にこう言った。

「おい、お前、なんでここに来てん?」

答えは、受かったのがここしかなかったからだ。

笑いだけがこの世界と繋がれる唯一の手段で、笑いがなければ、言語を失うに等しい。一般人のフリをして働いている時の、僕はまさに、聾唖者だ。

26 歳を境に、バイトの面接にさえ、全然受からなくなった。
27 歳は、なおさら酷い。
ここに来る前、アルバイトの面接を受けまくったけど、 5 つ連続で面接に落ちた。

持っていたお笑いの DVD を売り払い、金を作って、その場をしのいだ。
僕が 12 年間で、たった一枚だけ残せたお笑いの DVD 。
あれさえ、売らなきゃならなくなった。
命がけで作った大切な唯一の作品。
あれさえ、売らなきゃならなくなった。
その金で、生き延びた。


アルバイトの面接に落とされ続ける日々の中で、 iPhone で聞いていた立川志の輔の落語の中に『浜野矩随』という噺があった。

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笑いのカイブツ

ツチヤ タカユキ
文藝春秋
2017-02-16

この連載について

初回を読む
笑いのカイブツ

ツチヤタカユキ

他を圧倒する量と質、そして「人間関係不得意」で知られる伝説のハガキ職人・ツチヤタカユキさん、二七歳、童貞、無職。その孤独にして熱狂的な笑いへの道ゆきが、いま紐解かれます。人間であることをはみ出してしまった「カイブツ」はどこへ行くのでし...もっと読む

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コメント

gohantabetai555 ツチヤタカユキさんcakesの連載がめちゃくちゃ面白くて…毎週木曜日、これ読むと一週間何とかやっていけるように思う https://t.co/mXnGnxtLGG 3年以上前 replyretweetfavorite

416rpm 祈るように読んでる。今週分は日をおいても感情を言語化できなかった 3年以上前 replyretweetfavorite

yomco ツチヤタカユキさんのネタ帳を人工知能の学習用に使ったらおもしろいロボットできそう。 3年以上前 replyretweetfavorite

oimoyasann 堕落者落語|ツチヤタカユキ|笑いのカイブツ 笑いに命をかけるとはこのことですね…。本当に笑いが全てなんだ。 https://t.co/j6bmkZc5Au 3年以上前 replyretweetfavorite