アニメのサントラならではの魅力とは
—— 澤野さんは、連続テレビ小説『まれ』など、実写作品のサントラも作られていますよね。実写とアニメのサントラとでは、なにか違いがあるんでしょうか。
澤野弘之(以下、澤野) そうですね、音楽の作り方に違いはあまりないんですけど、ドラマよりアニメの方が、いろんなことにトライできるなとは思います。
—— それは、どういう意味でしょうか?
澤野 ドラマだと、どうしても日常的な世界観の作品が多くなるので、壮大なオーケストラが流れていると浮くと思うんです。でも、アニメは巨人やゾンビが出てきたりと世界が広いから、そういう音楽もしっくりくる。
僕は最近、サントラにボーカル曲を入れる挑戦もしているんですけど、それもアニメでやるほうが色々なアプローチができるので楽しいです。
—— そうなんですね。音楽ジャンルのなかでも「サントラ」を作ることの醍醐味はどこにあるんでしょうか。
澤野 サントラって、ポップスみたいに「ヒットチャートを狙う」というわけではないじゃないですか。作品に沿った音楽を作るのはもちろんですけど、その前提から外れないかぎり、今自分がやりたいと思う音楽にトライできる。
それに、作品をつくるなかで、おもしろいことにたくさん気づけるからですかね。
—— おもしろいこと、ですか?
澤野 はい。たとえば、『進撃の巨人』に「リヴァイ※1」っていうキャラクターがいるんですけど。
※1リヴァイ:『進撃の巨人』の登場人物。人類が暮らす城壁の外の調査を行い、巨人と戦う「調査兵団」の兵士長。その高い戦闘能力から「人類最強」といわれている。
—— 作中では“人類最強の兵士”と評される、とても人気の高いキャラクターですよね。
澤野 その「リヴァイのテーマ曲」と進撃ファンの間でいわれている曲※2があるんですが、実は、それはもともと「主人公が活躍してる曲」くらいの漠然とした注文で作ったものだったんです。
※2:「The Reluctant Heroes」(『「進撃の巨人」オリジナルサウンドトラック』収録曲)