私が愛娘を失って7年がたちます。その原因となったある宗教団体に損害賠償を求める裁判を続けてきましたが、今年3月、最高裁判所で上告が棄却され、敗訴しました。
事の発端は2004年夏、家の近所に自然食品の店ができたことでした。当時、11歳だった娘はインスリンが不足する糖尿病1型という難病を患っていました。娘にはできるだけよい食材を食べさせたいと思い、毎日のように通うことになりました。
そんな折、店主のA氏から「私の父親も糖尿病だったが、よい薬のおかげで治った」との話を聞きました。半信半疑でしたが、A氏の勧めで05年1月、自然療法士と称するB氏の講演会を聞きに行きました。そこで聞いたのは、「ある立派な博士が作った、どんな病気でも治す真光元という食品がある」とのことでした。
植物のヒメガマから作られ、難病・奇病を癒やすといわれた健康食品「真光元」
この時、彼女らが宗教団体の人であることは全く知りませんでした。ただ、「どんな方法でもいいから娘を治したい」という思いで頭が一杯でした。値段は150グラムで6万3000円と高価でしたが購入しました。
その数日後、B氏に娘を見てもらうことになりました。建物の中には、いくつかのしめ縄が張ってあったので、疑問に思っていると、B氏は「変な人物が入ってこないように結界をつくっている」と言うのです。冷静に考えればおかしな話ですが、当時はむしろ、結界の中に入れたことを喜ぶ気持ちさえありました。
宗教団体と知ったにもかかわらず、B氏を頼ったのには理由がありました。長らく娘がお世話になっていた医師が異動になりました。新しい担当医は非常に権威的な人で、不信感が募っていたのです。
体調不良に陥るが
「好転反応だ」と説得
実際、真光元を飲み始めた娘は食欲が増え、近所の人にも「最近、顔色がよくなったね」と言われるようになりました。しかし当然ながら、血糖値は全く下がりませんでした。
するとB氏から「真光元以外に余計なものを体内に入れないほうが効き目がある」と言われ、徐々にインスリンを減らしていきました。娘の体調は不安定な状態が続きましたが、「好転反応だ」と言われ、それを信じました。
その後、真光元を作ったという教祖の誘いで1週間、岐阜県の施設へ娘を預けることになりました。
娘はインスリンを持たずに出かけました。娘の体調は酷く、とても不安だったのですが、施設の人たちから「ここには看護師もいるし、教祖のパワーがあるから大丈夫だ」と言われました。それから2日後の朝、施設から電話があり、娘が倒れたことを知りました。現地の警察署には娘の変わり果てた姿がありました。
2005年7月に少女が死亡する事件が起きた岐阜県内の施設。Photo:KYODO
真光元は、今も名前を変えて健康食品として売られているようです。娘のような被害者が二度と現れないように願うばかりです。(談)