A.意外なことに、超ヘルシー食材「きのこ」!
クッキングパパの登場人物には、それぞれ好物がある。
荒岩家のメンバーは荒岩の料理をいつも喜んで食べているが、息子のまことは、小学生のときにはエビフライが一番の大好物だった。荒岩と「スイミングスクールの記録会で1番になったらお前の大好物を作ってやろうっ!!」と約束したエピソードが印象的だ。
○18巻 cook.178 P122 まことの目の輝きが荒岩のエビフライのうまさを物語る©うえやまとち/講談社
娘のみゆきは、幼稚園のときからタマネギが大好き。お菓子でも肉でもなく、タマネギというところが、なんとも渋い。どんなに水にさらしても多少辛みや刺激が残る生のタマネギもシャックシャクいっている。
タマネギを好きすぎるがゆえに、兄のまことはみゆきのために「オニオンゼリー」を作ったこともあった。スライスしたタマネギを煮込み、砂糖を加え甘くし、レモンとラム酒で風味をつけてゼラチンで固めたスイーツだ。
当時(1993年)は「まこと、それ、おいしいの……?」と不安になったけれど、2010年代となっては野菜を使ったスイーツは普通にひとつのジャンルとなって「ベジ・スイーツ」という言葉もよく聞く。
どこまでも時代を先取りする荒岩家なのだ。
○36巻 cook.359 P123 「オニオンゼリー」、当時としてはかなりのインパクト©うえやまとち/講談社
そして妻・虹子の好物はというと、チーズケーキ。
チーズケーキが登場するのは、ある年の虹子の誕生日のこと。虹子は上司から飲み会に誘われても「家で主人が待ってますのでっ」と答え、荒岩とまことが自分の誕生日を祝ってくれるのを楽しみにしていた。しかし虹子が帰宅しようとしたそのとき、陶芸作家で人間国宝の金山庄衛門先生が急に亡くなったという知らせが入る。
金山氏はマスコミ嫌いで取材が困難な人物だった。その金山氏のもとに何度追い返されてもあきらめずに根気強く通い、ついに金山氏の心を動かし、信用されただひとりの人物が虹子だったのだ。金山氏は虹子を受け入れてからは朗らかな一面を見せ、制作現場も惜しみなく見せてくれるようになり、親しい間柄になっていった。虹子にとって金山氏は特別な存在。追悼文を書くのは自分しかいない。深夜までかかって金山氏へのありったけの思いを込めて追悼文を書き上げたのだ。
もちろん虹子は荒岩とまことが誕生日パーティーの準備をして待っているのを知っていたけれど、自分にしかできない仕事をやり切ることを選んだ。 そして仕事をやり遂げて深夜に帰宅した虹子を、荒岩とまことは大好物の手作りチーズケーキで温かく迎え、真夜中のパーティで祝う。
虹子の仕事への情熱、荒岩の男前ぶり、荒岩家のハートフルさがグッとくるエピソードだ。こんなチーズケーキ、私も食べたい……! 虹子の仕事への情熱と、そんな一生懸命な虹子を理解し、見守る荒岩家の愛の深さがわかるエピソードだ。
○6巻 cook.55 P33 荒岩の笑顔、まぶしい©うえやまとち/講談社
○6巻 cook.55 P35 大きなチーズケーキがなんともおいしそう©うえやまとち/講談社
虹子はそのほかにも数年に一度くらいの周期でまつたけやフカヒレの姿煮など、高級食材料理が食べたくなる傾向があり、荒岩に作ってもらっている。
どこまでもうらやましい虹子……!
荒岩の母・カツ代の好物は梅干し。