テクノロジーを使って誰も見たことのない表現を探る—テクニカルディレクター石橋素

テクノロジーを使ったこれまでにない表現で、人々の目を楽しませてきたテクニカルディレクターのRhizomatiks(ライゾマティック)の石橋素さん。活躍の場はメディアアートから、近年ではドローンを使ったライブ演出など、エンタテインメントにおけるライブパフォーマンスの分野に広がっています。そんな石橋さんがBAPAのために、さまざまなプロジェクトの現場について話してくれました。


石橋素 (いしばし・もとい
1975年、静岡県生まれ。東京工業大学制御システム工学科、国際情報科学芸術アカデミー(IAMAS)卒業。主なプロジェクト、作品に「第65回NHK紅白歌合戦 Perfume」(テクニカルディレクション、ドローンシステム制作、2014年)、「elevenplay × rhizomatiks research “shadow”」(テクニカルディレクション、ドローン制作、2015年)、「particles」(コンセプト、システムデザイン、ハードウェア制作、2012年)、「ルル/やくしまるえつこ MV」(ロボットアームプログラミング、2011年)。

インタラクティブより、リアルタイムがおもしろいと気づいた

僕が今回ここに呼ばれたのは、BAPAのみなさんの卒業課題がライブの演出で、僕は最近ライブパフォーマンスなどに関わることが多いからなのかなと思っています。なので、今日は作品のコンセプトの部分というよりは、具体的な現場の話をたくさんします。

僕が所属しているRhizomatiks(ライゾマティクス)という組織は、ライブパフォーマンスの演出、メディアアート、広告のクリエイティブなどを中心に活動していて、社員は約35人。アルバイト・インターンが5人。ソフトウェアプログラマ、ハードウェアエンジニア、建築・現場系、グラフィックデザイナ、マネージャ、サウンド系、ネットワークエンジニア、経理といったメンバーで構成されています。広告的な仕事と、エンタテインメントでの実験的な作品づくりの2本柱でやっています。Rhizomatiks自体は2006年に設立されて、僕はその頃から中心メンバーの真鍋大度くんといろいろ作品を一緒につくっていました。僕が正式に加入したのは2011年のことです。

これはRhizomatiksに加入する前、2007年に大度くんとつくった作品です。この頃は、ライブやパフォーマンスの仕事はあまりなくて、主にこういうインタラクティブなインスタレーションをつくっていました。これはセンサとLEDが内蔵された床、音響装置、ステッキを使って体験するものです。ステッキで床のでこぼこをさわると、そのでこぼこに音の情報が記録されていて、振動のデータから音と光が生成されていきます。

これは、インスタレーションを使ってMVを撮影するという、ちょっと変わった作品です。MVとしてのアウトプットもあるし、インスタレーションとしてライブで楽しむこともできる。構造としてはまず、円筒形のセットの内壁に、複数のさまざまな形をしたオブジェクトを取り付けてあるんです。それがモーターで動いているのですが、じつは動力は一つしかない。真ん中に大きなモーターがあって、そこからギアで全部のオブジェクトが連動していて、メカ要素が動いている。

真ん中にはカメラをつけたロボットアームがあって、それが円筒の中のいろいろな箇所を撮影していきます。ワンカットで曲に合わせて撮影をして、編集も何もせず1本のMVをつくるという手法を試してみました。
これはICCに展示していたのですが、部屋にはいると、そのカメラで撮影している映像が曲に合わせて壁に大きく映しだされているんです。見た人は「なにかのMVが流れているんだな」と思う。でも、隣の部屋から「ウィーン」という機械の音もしてくる。奥に進むと、円筒形のセットが置いてあって、中にカメラがある。どうも、さっきの映像はこのカメラで居間撮影されてるものなのではないか、となんとなく想像がつく。でもはっきりとは、わからない。映像と円筒形のセットは、わざと同時に見えないように配置してあって、そこはイメージしてもらうように仕掛けをつくりました。

この作品は、映像ではない視覚表現に凝っていたときにつくりました。
僕はシステムデザインとハードウェア開発を担当しています。LEDを内蔵したボールを、らせん構造をもつレールの上に転がし、それを点滅させることで、空中に像が描けるのではないかと考えたんです。ボールはただ物理法則に従って転がっているだけなんですけど、そのスピードをマイクロコンピュータで検知して、スピードに合わせて光るタイミングを変えています。そうすると全部で100個くらいのボールの総体として、何かの像が浮かび上がってくる。観に来たお客さんは光のパターンを選ぶことができます。

でもこれがインタラクティブなのかと言われると……そうでもない気もする。 この少し前から、僕はインタラクティブよりも、ライブやリアルタイムということがおもしろいんじゃないかと気づき始めました。リアルタイム性が気持ちよさの根源にある。そこから、ライブの方向に力を入れるようになりました。

トラブルが起こっても、10を0にはしないリスクヘッジを
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コメント

Singulith >  https://t.co/kKvCrr6Ekp 4年以上前 replyretweetfavorite

yaiask ライゾマ石橋さんのライブ演出についての講義。ドローンはメンテナンスで個体差を出さないようにするのが大事、という話はなるほどなーと 4年以上前 replyretweetfavorite