クリエイティブな仕事をするためには、怒りも不安も必要

予防医学研究者の石川善樹さんが、cakesを運営するピースオブケイクでしてくれた特別講義「感情をどうコントロールするか」。ポジティブな感情とネガティブな感情が3:1のときは「幸せの黄金比」といって、組織としても生産性が上がるそうです。しかし、クリエイティブな仕事をするためには、いつもハッピーでいることが有効だとは言えないのだとか。これからの時代を生きるビジネスマンが、感情をうまく味方につけて仕事をするためのヒントがつまっています。(聞き手:加藤貞顕)

喜びは短く、悲しみは長く続く

石川善樹(以下、石川) さて、みなさんには1週間を振り返って、ネガティブ感情(怒り、イライラ、悲しみ、恥、罪、不安/恐怖)とポジティブ感情(幸せ、誇り、安心、感謝、希望、驚き)の12個の感情について、感じられていたら○、あまり感じられていなかったら△、全然感じられていなかったら×を書き込んでもらいました(第2回「幸せな時に、大事な決断をしてはいけない?」)。

自分の感情を振り返ってみるのは、初めての経験だという人も多いんじゃないでしょうか。これは、定期的にぜひやってみてください。そして、最近感じていない感情があれば、意識的にそれを感じるような行動をとってみてください。ここで感情の研究をしている西本真寛さんに、それぞれの感情の特徴について解説してもらいましょう。

西本真寛(以下、西本) 感情というのは、かつては「快」と「不快」の2種類しかないとされていました。それが近年、もっと分類されて研究が進んできました。それぞれの感情が、何に注意を向けている状態なのか、ということが分かるようになってきたのです。たとえば、「不安」という感情は、自分ではとらえきれない、わからないものに対して注意が向いている状態なんです。

— じゃあ、それがわかってしまえば、不安はなくなる、と。たしかにそうかもしれません。

西本 不安とか恐怖というのは、手に負えないものに注意が向いている状態です。「悲しみ」は、無いものに注意が向いている状態。例えば、小さな悲しみでいうと、冷蔵庫に入れておいたはずのケーキがなくなってる、とか。何が無くなって自分は悲しいと思っているのかがわかれば、それを埋め合わせる新しいものは何か、を考えることもできます。「怒り」というのは、大切なものがおびやかされることに注意が向いている状態です。自分の価値観などが否定される、というときに怒りはわきやすいですね。

石川 新聞記者の方が、インタビューをするときにその人が何に対して怒っているのかを聞くと、その人のことがわかると言っていました。

— ネットで何かの記事が炎上するときって、大抵そのことに対して、すでに怒っている人がたくさんいる時ですよね。たとえば、最近だと、芸能人の不倫とかが典型的な例ですけど。

石川 ヘルマン・ヘッセの『デミアン』という小説の中に、人は自分の中にないものに対して怒りを感じない、という一節があります。僕はこれを読んで、怒りというものをすごく理解できました。

西本 あと「喜び」というのは、獲得したことに注意が向いている状態です。

— なるほど。獲得、というのは一瞬の動作ですよね。喜びが意外と長続きしないのはそのせいなのか!

西本 そうですね。悲しみのほうが長く続くんです。無くなってしまったものは、ずっと無くなったままですから。そして、「安らぎ」は、満たされていることに注意が向いている状態です。

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石川善樹

予防医学研究者であり、論文を読むのが趣味という石川善樹さんは、cakesを運営するピースオブケイクに遊びにくると、最新科学のさまざまなトピックについて熱く語ってくれます。その話があまりにも面白いので、いっそのこと連載にしようということ...もっと読む

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コメント

kabudayosi 不要なモノ無し! https://t.co/qWLE7b9DJl 10ヶ月前 replyretweetfavorite

aniram_czech 「ヘルマン・ヘッセの『デミアン』という小説の中に、人は自分の中にないものに対して怒りを感じない、という一節があります」この連載おもしろい: 10ヶ月前 replyretweetfavorite

iheucovenata ”「不安」とはわからないことに注意が向くこと。「恐怖」とは手に負えない者に注意が向くこと。「悲しみ」とは無いことに注意が向くこと。「怒り」とは大切なものが脅かされた時に注意が向くこと。”|cakes(ケイクス): https://t.co/wHjgjxLFi3 約1年前 replyretweetfavorite