現代の人気者はネットから生まれる 佐藤詳悟×加藤貞顕

吉本興業でナインティナイン、ロンドンブーツ1号2号などのマネージャーを経験し、現在は幅広いジャンルのクリエイターを抱えるエージェント会社「QREATOR AGENT」の代表を務める佐藤詳悟さん。
テレビからウェブへとマネージメントの場を移した背景には、現代の人気者はネットから生まれる、という実感があったといいます。
これからの時代に生き残るクリエイター像から、ハイブリッドなメディア戦略方法まで、全3回にわたって語っていただきました。

人気者はネットから生まれる時代

—お二人の出会いはいつですか

加藤貞顕(以下、加藤) 初めてお会いしたのは、去年の1月くらいです。その時はまだクリエイターエージェント(以下QA)を立ち上げる前で、佐藤さんが当時お勤めされていた吉本興業にいらしたころですよね。

佐藤詳悟(以下、佐藤) そうなんです。ナインティナインさんやロンドンブーツ1号2号さんなどのマネージャーを7年ほどしていました。

加藤 ということは、仕事はテレビがメインですよね。なぜウェブ業界に興味を持たれたんですか?

佐藤 当時、ロンブーさんも『金曜★ロンドンハーツ』や『笑っていいとも!』のレギュラーなど、仕事の幅も広がっていました。マネージャーとしてはできる限りのことはやれたかなと思っていたんですが、その頃ITベンチャーの人たちと知り合うようになって、このままじゃヤバいと思ったんです。

加藤 どうヤバいと感じたんですか?

佐藤 IT業界にお金が集まる流れになってきていて、テレビのことだけをやっていると、自分がマネージャーやプロデューサーとして生きていくうえでも、担当しているタレントさん自身も、限界があるんじゃないかと危機感を持ちました。
そこで、お金の流れを知るために営業部に異動させてもらったんです。

加藤 なるほど。タレントさんの仕事をもっと広げるためにも、他の業界を見たかったということですか。

佐藤 そうですね。それに、僕はどこか「クリエイター」になりたかった。そこでコンテンツのプロデューサーをやったり、ディレクターのような仕事もやってみました。
でも、向いてなかったんです。CMや番組を作ろうとしても、1時間くらいの編集作業で飽きちゃう(笑)。結局、数年後にまたマネジメントに戻りました。

加藤 その後、独立されたのは、どうしてなんですか?

佐藤 マネジメントを離れた時期に、いろんな方にお会いして。起業家や教授など、いわゆる「一般人」におもしろい人がたくさんいることに気づいたんです。
そういったおもしろい人たちを世に出していったら、世の中はもっとおもしろくなるんじゃないかと。

加藤 そのために、ウェブで情報を発信する必要があると考えたんですか?

佐藤 はい。というのも、いまってテレビ番組の制作会議でも、ウェブから得た情報を元にして企画会議することが多いんです。「ネットにこんなおもしろい記事があるよ」とか「この人をキャスティングしたらどうだろう?」といった相談をする。

加藤 最近よく、ツイッターの発言とかネットの情報がテレビで紹介されていたりしますよね。

佐藤 きっと昔は実際の人や場所、たとえば「ゴールデン街にこんなおもしろい人がいた」とか「隣のおじさんがこんな事言っていた」といったネタがきっかけになって番組ができていたんじゃないかと思うんです。

加藤 リアルな場所での発信が強かった。

佐藤 でも今はネットが先で、すでに知っている情報がテレビに出ることになる。テレビとしてもネットで人気がある人に出演してもらえると視聴率も取れますし、内容もおもしろくなる。
だから僕は、どうすればおもしろい人をウェブ上で多くの人達に見てもらえるかと考えているんです。「ウェブで拡散されています」「今すごくバズってます」といった情報とプロフィールを合わせてテレビ局や広告代理店への営業に持って行くことが、一番興味を持ってもらいやすい。

加藤 たしかに今は、ネットで注目されるとどんどん人気が出ますよね。
最近だと、ぼくがもともといた出版の分野でも、才能のある書き手は出版社に持ち込むより先にネットで書くようになってきています。

300フォロワーが一夜にして30,000フォロワーに

—ネットがブームのきっかけになる現象は多いですよね。

佐藤 沼田晶弘先生という東京学芸大学附属小学校の先生を、2015年7月頃にHRナビさんに取材していただいたんですよ。
そうしたら、たったひとつの記事が9.6万いいね!、1.3万シェア。ツイッターのフォロワーが300くらいだったのが3万になりました。

加藤 なにが起きたんですか!?

佐藤 普通の小学校の先生ですよ。次の日に出版社さんから連絡があって、結局本を2冊ほど出しました。
本当に、ひとつのウェブの記事で人生が変わる。芸人さんで言うと「エンタの神様」に出て、次の日に営業の話がいっぱい来るみたいな感じです(笑)。

加藤 その例えはわかりやすい(笑)。
でも本当に、おもしろい人にフォーカスが当たる速度が上がりましたね。かつては本を出版して人生が変わるということはあったけど、今はウェブのたったひとつの記事で人生が変わるのか。

佐藤 若手起業家の椎木里佳さんも似たパターンです。
彼女は2015年の春頃にはすでにウェブでは有名だったんですが、僕たちが彼女のウェブ記事を持って『めざましテレビ』に営業に行ったんです。すると翌週には『めざましテレビ』の出演が決まりました。
その時の出演で彼女が「『本能寺の変』っていうエグスプロージョンのネタが今女子高生に人気だ」と紹介したら、その『本能寺の変』がものすごくバズったんです。
ネタ元は椎木里佳だとなり、『サンデー・ジャポン』などテレビでの露出が増え、あっという間に有名になりました。

加藤 なるほど、そういう流れだったんですね。

佐藤 波に乗れるとすぐに話題になります。
彼女の場合は10代~20代の若い文化人の需要があったことと、テレビの影響力は大きいです。とはいえ一番簡単にムーブメントを起こしやすいのはウェブの記事。
同時にテレビや動画でも露出することで、また元のウェブ記事が注目され、さらにそれを出版したり……といった波が生まれます。
テレビによく出ている芸能人の方だって、ネット動画にも出るし、ウェブや雑誌の記事にも露出するというハイブリッド形式ですよね。

クロスメディアで盛り上がる流れを、まずは自ら作り出す

—クロスメディアにより、注目されるサイクルを作ろうとしているんですね。

佐藤 はい。誰でも発信できるウェブが火付け役になり、有名人だけでなく、無名のおもしろい人たちが世に出やすくなっていると思うんです。
今までは芸能人になりたい10代の女の子はどこの事務所に入ったらいいのかわからず、最初に出会ったところに入らざるを得なかった。でも今はネットがある。

加藤 出版業界も同じです。かつて書き手は出会う編集者によって人生が決まるにも関わらず、編集者を選べずにいました。
それが今は自分でネットにのせることで、多くの編集者の目に留まる可能性が広がります。

佐藤 さらに、おもしろい人が世に出るルートがシンプルだといいなと考えているんです。
まずウェブのここに掲載して、さらにここに掲載したら注目される……という流れができると一番望ましい。それを実現するために、クリエイターの情報が発信できる会社(QA)を立ち上げたんです。

(次回は5月24日公開予定)

(原稿:河野桃子)

佐藤詳悟(さとう・しょうご)

1983年生まれ。2005年に吉本興業に入社しナインティナインやロンドンブーツ1号2号、COWCOW、ロバートなどのマネージャーを歴任。パパ芸人のプロジェクト「パパパーク」や小学生向けのワークショップスクール「笑楽校」など様々なプロジェクトをプロデュース。番組、広告、イベント、WEBなど幅広くエンターテインメントのプロデュースに関わる。2015年2月にQREATOR(クリエイター)の総合営業代理店「(株)QREATOR AGENT」を創業。

この連載について

「21世紀の変人たち」とする「真面目」な話

QREATOR AGENT

レオナルド・ダ・ヴィンチやエジソン、コペルニクス、空海 etc。これまで世の中を変えてきた人たちは、ほとんどが「非常識」な考えを持つ「変人」たちでした。この連載では「21世紀の変人たち(=クリエイター)」に焦点を当て、彼らが何を考えて...もっと読む

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TORYUMON_FV 佐藤氏は落合陽一氏と対談モン! 皆さんご存知の様々な方をプロデュースしてるモン! 3ヶ月前 replyretweetfavorite