塩澤 本日は早川書房が創立70周年を迎えたことを記念して、「早川書房70年のSF出版のなかで最良の年はいつだったのか」ということを評論家の高橋良平さんに事前に決めていただき、それらを10位から1位まで順に明らかにするカウントダウン形式で語っていきたいと思います。
高橋氏(左)とフセンをめくっていく編集長・塩澤
【第10位 1978年】
塩澤 これはちょうど時節柄、『スター・ウォーズ』第一作公開の年ですね。
高橋 そうですね。76年にはSF雑誌の〈奇想天外〉が復刊されたり、日本作家が中間小説誌や各社ノベルスに“浸透”してすでに勢いはあったけど、やっぱり『スター・ウォーズ』登場の影響は大きかった。
1978年(昭和53年)4月7日 朝日新聞夕刊(高橋氏提供)
《海外SFノヴェルズ》の刊行が始まったのもこの年です。ハインラインの『愛に時間を』と、ディックの『パーマー・エルドリッチの三つの聖痕』が最初の二冊。実はそれまで早川書房は、ハードカバーで海外SFを出したことがなかったんです。
ディック『パーマー・エルドリッチの三つの聖痕』 現在はハヤカワ文庫SF版で出ています
塩澤 ちょっと意外な感じですよね。
高橋 だから、ある意味でSFが再出発をした年だともいえますね。それにサンリオSF文庫が創刊されたのもこの年です。
【第9位 1957年】
塩澤 これは何の年でしょうか?
高橋 12月に《ハヤカワ・ファンタジイ》が、『盗まれた街』と『ドノヴァンの脳髄』の二冊で始まった年です。〈エラリー・クイーンズ・ミステリ・マガジン〉の編集長だった都筑道夫さんが最初の十冊をセレクトをして、のちに〈SFマガジン〉を立ち上げる福島正実さんが海外の現代SFに目覚めるきっかけになった。このふたりがいたからこそ、早川書房でSF小説の出版が始まったわけなんです。
フィニイ『盗まれた街』
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