目のつけ所】15年間で、1万匹のダンゴムシと共同研究

ケトルVol.10は、「学者」特集!
コラムコーナーでは、「目のつけ所がスゴい!」研究の数々ご紹介。第4回は、同特集でインタビューにご登場いただいた生物学者・福岡伸一さんご推薦、森山徹さんの研究に迫ります。

虫じゃなくて、エビやカニの仲間なんです

ダンゴムシについて、多くの人は誤解をしています。まず、彼らは「虫」ではありません。エビやカニといった甲殻類の仲間なんです。だから、茹でると赤くなります(絶対に真似しないように!)。

日本各地にいるのに古い書物に登場しないので、明治時代に海外の貿易船に紛れてやって来たとも考えられています。

とても身近だけど、実態はあまり知られていない。そんなダンゴムシと協力して、「心」の研究をしている学者がいます。信州大学の森山徹さんです。

[信州大学]森山徹助教/1969年生まれ。専門は比較認知科学、動物心理学。ダンゴムシなどの行動実験を通し、心や意識、私とは何かを独自の視点から探求。日本認知科学会奨励論文賞を受賞している。記事の研究内容は著書『ダンゴムシに心はあるのか』(PHP研究所)に詳しい

「そもそも心とは何なのか。人間固有のものなのか。そんな疑問を追求するため、過去15年間で約1万匹のダンゴムシの研究をしてきました。その結果、自信を持って『ダンゴムシにも心がある』と断言できるようになったんです」

なぜ心の研究をするためにダンゴムシを選んだのですか?

「一般的に心は『感情』とほぼ同義。反対に科学者は『脳の特定部位』を指しますが、私はどちらにも違和感があった。心の定義を見直し、それを認めてもらうためにも、人間以外の生物に心があることを示そうと思ったんです」

私たちは「心とは何か?」と聞かれると、「感情」や「考える力」などと答えがち。しかし例えば“顔で笑って心で泣く”といった状態を考えてください。心は「泣いて」いますが、心が感情であるならば、どうして顔は「笑う」なんて正反対のことができるのか。そんな疑問から、森山さんは心の定義をもっと厳密に考えているそうです。

「この場合、笑顔は『悲しい』という感情を抑制しています。でもそれは、『悲しい』が本当の心という意味ではありません。むしろ、『泣く』という行動を抑制することで、『悲しい』を含むさまざまな活動が隠れてしまうワケです。その『隠れた活動部位』こそ、心の正体なんです」

心は感情や脳の一機能とは限らない。ならば、どんな生き物でも心の存在を証明できるのでは—。そんな発想が、森山さんの研究の出発点でした。

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