道徳と非道徳を分けるのも、人間の本能です
岡田斗司夫(以下、岡田) 初めて橘さんにお会いできたのが楽しくて、夢中でいろいろしゃべっていたら、あっという間に時間が経っていました。
橘玲(以下、橘) この連載は「道徳」がテーマと聞いていましたが、こんな話で大丈夫ですか?
岡田 いやー、どれも道徳につながる話でしたよ。いつも大枠としては、「小中学生向けの道徳の教科書をつくるとしたら、何を書くか」という問いを立てて話を始めることが多いんですが、今日の議論は、その問いにつながるものばかりでした。
橘 そうですか? 人間の本能の話ばかりしてしまった気がしますが……。
岡田 道徳だって、人間が生き残るために必要なものという点では、本能につながりますよ。
橘 たしかに、道徳や正義って感情の問題ですからね。どんなに論理的に正しくても正義と見なされないものはたくさんあるし、最後は感情で受け入れられるか受け入れられないかの話になる。
岡田 もちろん、その直感にたどりつくまでに悩むことも必要ですよね。僕が「道徳の時間」を始めたのも、ゲストとの思考を通じて道徳についての肌感覚のすり合わせができたらと思ったからなんです。
橘 今回の対談で感じたのは、進化論的に合理的でも道徳的には間違っていることがあるということですね。
岡田 というと?
橘 人種差別などがその最たる例です。差別の本質は縄張りじゃないですか。それは、人間社会の基本的メカニズムでしょう。
岡田 あ! ほんとだ。
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