なんでも一人で抱えちゃう病、またの名を自分でやった方が早い病。
自分でやった方が早い
どいつもこいつも仕事が出来ない
この病にかかった人は、そうぶつくさ言いながら、自分でもいっぱいいっぱいになるぐらいに仕事を抱えてしまいます。
こういった人は、周囲の人間より自分の方が優秀だと信じており、言ってしまえば、誰も信用していない人です。
信用していないから、仕事を他人に任せられない。
信用していないから、自分のつらさを人と分かち合うこともできない。
どこにいても誰とも打ち解けることができず、集団のなかで孤独を感じてしまいます。
そしてこの孤独から逃れようと、彼らはより一層必死に仕事をします。
仕事で人から認められることで、自分の居場所をつくろうとしているのです。
一人で仕事を抱え込むのは、他人から必要とされるためなのです。また、必要とされるためには、自分が「有能」でなければなりません。だからこういった人は、びっくりするぐらい努力家であり、我慢強い人でもあります。
しかし、誰も信用できず打ち解けられないのに、誰かに認められたくて必死に仕事をするなんて、おかしな話だと思いませんか?
この病にかかった人は、自分の心と肉体的なキャパシティを越えて仕事をしていくので、どんどんと苦しくなっていきます。
苦しくなって、誰もわかってくれないと絶望の中を生きています。ですが、周りの人はあなたがそんなに苦しんでいることなんて知りません。
あなたが心を開こうとしていないのだから、あなたの気持ちなどわかるはずもないのです。
人と人との関係は、思いを分かち合うことからはじまります。
苦しみや楽しみを分かち合い、人とつながって初めて、自分が自分らしくあれる居場所をつくることができるのです。誰とも打ち解けず、自分だけで抱え込む人は、小さいころからこの居場所を持っていなかった人です。
誰にも頼れないなら、自分自身が強くならなければ。
ずっとそう思ってきたのでしょう。
でも、24時間働き続け、なんでも自分一人で解決できる人はいません。
苦しみや弱さを吐き出して誰かに話すのは、恥ずかしくてみっともないことだと思うかもしれません。しかし、人は他人の弱さを見た時はじめて共感を覚え、心の距離が近づきます。
がちがちに固まった自分の殻を少しだけ破って、つらさや大変さを誰かに話すことから始めてみませんか。
路地さん「自分の居場所……」
何を言っているのだろうと路地さんは思いました。自分に与えられた仕事は100%こなさなければいけません。それがプロの仕事であり、それが路地さんのプライドでもあります。
仕事は仕事で、それ以上でもそれ以下でもありません。自分の居場所づくりなんかとは関係ないはずです。
それでも、ほんの少しだけ、路地さんは昔のことを思い出しました。それは小さいころ風邪をひいた時のことです。熱っぽく頭が痛く、ずっと路地さんは寝ていました。
“なんで風邪なんて引くの”
不機嫌そうな声で母親が言うのが聞こえました。
風邪なんて引いちゃいけない。
風邪を引くのは自分の体調管理がなっていないせい。
風邪をひくと母親の機嫌が悪くなるのがイヤで、熱が出ても路地さんは学校に行くようになりました。
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