2016年の大統領予備選は、いっときも目が離せないほどのドラマが繰り広げられている。
民主党サイドについては前回説明したが、激戦なものの、民主党員の約7割は、ヒラリーとサンダースの戦いが「党を活性化している」と思っている。
ところが、共和党サイドはまったく逆で、候補者同士の戦いが「党を分裂させている」と約6割が考えているのだ。共和党が悲観的になるのも無理はない。
現在の共和党は、破滅寸前なのだ。その現況をご説明しよう。
共和党の予備選でトランプ以外で唯一残っている候補者のジョン・ケーシック
※追記:2016年5月4日アメリカ東部標準時間17時、ケーシックも撤退を表明
古い共和党委員にはトランプ独走は理解不能の事態
第二次世界大戦後、ドナルド・レーガン大統領が誕生するまでの共和党は、「エリートの党」を自認していた。
たとえば、東海岸であれば、裕福な家庭で生まれ育ち、寄宿制の名門私立高校からアイビーリーグ大学に進み、当時セブンシスターズと呼ばれた名門女子大(バーナード、ブリン・モア、マウント・ホリヨーク、ラドクリフ、スミス、ヴァッサー、ウェルズリー)の在学生か卒業生と結婚し、メンバー厳選のカントリークラブで似たような人々とだけつきあい、富と人脈を次世代に継ぐ、といった人々が党を牛耳っていた。
以前『トランプにハイジャックされた共和党の奥の手』で説明したが、そういった古い共和党員にとって、今年の共和党予備選の展開は理解の範囲を超えている。
数多くの候補でスタートした共和党予備選は、トランプの下品なジェスチャーや暴言に感化され、またたく間に泥仕合になった。
トランプに少しでも抗った候補は、次のようなありがたくないニックネームとハッシュタグを受け取り、ネットでトランプの支持者たちから嘲笑された。
ジェブ・ブッシュ:「エネルギーがなくて、情けない奴」#LowEnergy
マルコ・ルビオ:「ちびのマルコ」#LittleMarco
テッド・クルーズ:「嘘つきテッド」#lyingTed
有権者は、トランプの差別用語、真っ赤な嘘、候補の妻まで対象にするネットいじめを咎めるどころか、「票」という褒美を与えた。