道徳の時間

橘玲 vol.3 本当の自分って、いないんですか?

人間の本能が確率論に目をつむり、因果論に走ってしまうのは、それが人間の「夢」に反した考え方だから。それでも橘さんが「合理的にものを考えよう」と語る本を書きつづけるのは、理想と現実のギャップに悩む人々のためでした。

虚像を示す仕事という点では、政治家と作家は同じなんです

橘玲(以下、橘) 投資で大きく成功できる人は、リスクをとれる人です。物事を合理的に考えすぎると、「この成功はただの運。次の投資が成功する確率も五分五分なんだから、ここでやめておこう」となってしまう。でも、莫大な利益を生み出すためには、「これで成功できたんだから、次は倍にして勝負するんだ」と信じてガンガン行かないといけない。

岡田斗司夫(以下、岡田)  ここまでの話を聞いていて、僕は成功できるのは確率論でものを考えられる人なのかと思ったんですけど、実は逆なんですね。

橘 そこそこの利益を得ることが目的なら、合理的思考をできる人の方が断然有利です。金融市場における因果論というのは勘違いなので、それを信じて勝負しても大半は失敗するだけですから。それでもごく一部の人は、運や偶然で成功するんです。

岡田  なるほどなあ。僕、ITバブルで成功した人に興味があって、たくさん会いに行ったことがあるんですが、彼らはたしかに後者にあてはまっている。要するに、ノウハウがあったから成功したんじゃなくて、先のことを考えずに投資する度胸があったから成功しているんですね。成功が確率論だということをわかっていたら、怖くて動けなかったはず。

 まさに典型ですね。お祭りのときに踊れる人が成功するんです。

岡田 とはいえ、成功者になれるのが一握りだということを考えれば、普通の人間は合理的な思考を身につけて、そこそこの成功を納めること、失敗しないことを目指す方がはるかにいいわけですよね。

 夢がないことを言ってしまいますが、その通りです。

岡田 いやー、橘さんのように、それを言ってあげる役目をするのは、本当に辛いと思います。前回も言いましたけど、物書きだって読者に「夢」を与えないといけないですから。お金儲けの話にかぎらず、読者は僕らが「成功者」だと思って、そのノウハウを学んで成功したいわけでしょう?

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道徳の時間

岡田斗司夫

評価経済など新しい資本主義が加速しはじめた21世紀。 そんな新時代の「道徳」とは、一体どんなものでしょうか。 未来社会をサバイブする岡田斗司夫が、 ゲストとともに様々な事例を引用しながら、 現代の「道徳」について考えていきます。 (月...もっと読む

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コメント

naokure これですね、、 最大の誤解は。 夢は推進力になるのだけど 決定力じゃないという。真実。 https://t.co/ROC7r3J32P 4年弱前 replyretweetfavorite

a_sakamoto この作家さんの理論は、注目。前後も必読。/ 5年以上前 replyretweetfavorite

sadaaki 自我についてのお話。イワシ化ってすごい言葉だなあ。おもしろい。 5年以上前 replyretweetfavorite