「行動に移せずに悩んでいる人」の多さに気づいた
—— 加藤さんは、知る人ぞ知る有名人だと思うのですが、当時CFOを担っていたヒト型ロボットベンチャー『SCHAFT(シャフト)』が2013年にGoogle(グーグル)へ買収されてから、グッと注目度が上がりましたね。
加藤崇(以下、加藤) 「世界一の国産ロボットはなぜグーグルに買われたのか」という記事を2014年末に文藝春秋のWEBサイトで掲載したところ、その記事に対する反響が非常に大きかったんです。
—— 非常に優れたヒト型ロボットの技術をもつ東大発ベンチャー『シャフト』を、なぜ日本で育てることができなかったのか。そしてなぜ、最終的にグーグルに買収されたのかについて書かれた記事でした。
加藤 予想以上の反響があり、媒体の人も、そして僕自身も驚きました。ただ、この記事の反響を通してもっとも驚きを感じたことは、若手のビジネスマンで「何かやりたいと思っているけど行動に移せない」という人の多さだったんです。若い人の中には、「普通ではない、大きな成果をあげたい!」と思っている意欲的な人がたくさんいると思います。「スカっとホームランを打ちたい!」みたいな。でも、社会的な抑圧なのか、自信が無いからなのか、なかなか一歩を踏み出すことが出来なかったりする。そのような姿が透けてみえたのです。
—— 私も、会社を辞めて独立したことで、「よく辞めたね」や「怖くなかったの?」と聞かれます。
加藤 そうですよね。一歩を踏み出せない人が多いようなんです。けれど、それはすごくもったいないことで、「普通ではない、大きな成果をあげたい!」と思うような人は、踏み出さないと始まりませんよね。そこで、「なぜ、行動に移せないのだろうか?」と考えた時に、やっぱり自信が無いからなのかな、と思ったんです。「自分は特別な人間でもないし、何も持っていない」みたいな。実際のところ、僕も昔はそうだったんです。
—— いやいや。加藤さんは華やかな経歴をお持ちなので、「平凡」というよりは「もともとスゴい人」のような感じがしてしまうのですが……。
加藤 よく言われるのですが、そんなことはまったくないんですよ。特に幼少期は、このご時世には珍しいほど貧しい家庭で育ちましたし。だからこそ、もともと「普通で平凡」だった僕が大きい成果を出したという経験は、「普通じゃないことを成し遂げたい」と思っている若者にとって参考になると思うんです。
—— なるほど。