ここは東京、西新宿。医療器具メーカー「ドブ板メディカル株式会社」の人手が足りない監査部に、ピンチヒッターが現れました。
路地さん「わかりました。僕がやっておきますから」
がちゃん!と、荒々しく電話を切ったのは、先日入社したばかりの会計士、路地さんです。
路地さんはフルタ監査法人という超大手監査法人から、ドブメディのアレでナニな内部統制をサムシングするために金で雇われた男です。
瑠雨図さん「大丈夫ですか?」
そう心配そうに路地さんに声をかけるのは、同じ監査部の瑠雨図(ルウズ)さんです。瑠雨図さんは、ちょっとイケメンでハイスぺな路地さんと、
あわよくばステディな関係
になろうともくろんでいました。
路地さん「いや、ちょっと前の引き継ぎがうまくいってなくて……新しい担当が電話ばかりかけてくるんですよ」
はあっと路地さんは深いため息をつきます。
路地さん「まあそれはいいんですけど……ところで、瑠雨図さん。いただいた資料でここがちょっと違うんですが」
瑠雨図さん「え、あ? す、すいません!」
路地さんに間違いを指摘されて、瑠雨図さんはびくぅっとなりました。
そんな瑠雨図さんを見て、路地さんはまた深いため息をつきました。
路地さん「いいです。僕がやっておきますから……」
瑠雨図さん「ふ、ふええええ……すいません……」
路地さんが来てからというもの、プライドをべこべこつぶされまくりな瑠雨図さんなのでした……。
瑠雨図さん「路地さんって、なんでも自分でやろうとするのよぉ」
ランチタイムのカフェで、あ~あっと瑠雨図さんはため息交じりにそう言いました。
陽太「なんでも自分でやるなんて大変じゃない?」
そう言うのは、向かいに座る瑠雨図さんの同期、3年目営業の出来内陽太(デキナイヨウタ)です。
瑠雨図さん「そうなのよ。いつも深夜近くまで会社に残ってるの」
屑谷先輩「馬鹿みてえだな」
容赦なく言い放つのは、2人の先輩の屑谷良(クズタニリョウ)です。
陽太「でも、真面目ないい人なんじゃないですか?」
屑谷先輩「真面目でもなんでも、仕事を全部自分のところに集めるなんて、ただの馬鹿だ。仕事なんて他人に振ってナンボだろ」
陽太「ぐぐぐ……爽やかな笑顔でそんなクズいことを言うなんて、さすが先輩……そこにしびれる憧れるぅ……」
瑠雨図さん「でも……」
瑠雨図さんは首をかしげました。
瑠雨図さん「なんでそんなに仕事を自分のところにかきあつめて、深夜まで仕事するんでしょうね」
屑谷先輩「仕事が好きなんだろ」
瑠雨図さん「うーん……」
屑谷先輩の答えになんだか納得がいかなくて、瑠雨図さんはまた首をかしげるのでした。