俳句先輩 男子くん、どうした
男子くん 寝坊しちゃいました。春眠暁を覚えずってやつですね(ドヤ顔)
俳句先輩 ふっ、君もそういうことを知っているんだね
男子くん それぐらい知ってますって
俳句先輩 蛙に目を持って行かれたというわけか
男子くん そう、とうとう持って行かれたんですよ……って、怖っ! ホラーじゃないですか!
春の暖かさに、しきりに眠気をもよおすのは、蛙に目を借りられるためだという古い言い伝えがあるんだよ、男子くん。
蛙は冬眠から出てきて産卵を終えると、また土中へ戻って夏まで出て来ない。雌雄(男女)が逢わずに離れていることから、「目の
「蛙に目を持って行かれる」の意味は、要するに男子くんがドヤ顔で言い放った、「春眠暁を覚えず」ですね。ちなみに、
俳句先輩 女の子の夢でも見ていたんだろう
男子くん ちがっ、ちがっ!
俳句先輩 君は実にわかりやすい人ですね
男子くん 先輩はどうして何でもお見通しなんですか?
俳句先輩 春の夢は、艶めいて甘いものなのですよ
春眠の中で見る春の夢は、「春の夜の夢のごとし」など、はかないことのたとえにも用いられます。男子くんの見た夢は、さぞかしはかなかったのだろうねぇ。
男子くん あー、今日は頭が働かない。先輩、俺、ダメっす
俳句先輩 で、彼女はどんな子なんだい?
男子くん 彼女じゃありません!
俳句先輩 つきあってどれくらい?
男子くん だから彼女じゃないすって
俳句先輩 なるほど。彼女ではないけど夢には出てくる、と。
男子 はぁ~
春は、とらえどころのない憂いや哀しみを感じる季節。春愁には、
同じ物思いでも、秋の物思いは
春も秋も、ぼーっとできる、淡い季節。どちらも物思いに向くんですね。だから、夢も見る。遅刻する。仕事もサボる。そして、頭の中は妄想だらけになる。
男子くん 実は・・・来週、会う約束しているんです。今から緊張して・・・
俳句先輩 拳握るのみや男の春愁は
男子くん ????
俳句先輩 と、能村登四郎という俳人が詠んでいます。男子くん、がんばって。
男子くん なんかよくわからないけど・・・勇気づけられた気がします!
==つづく==
この連載について
春夏秋冬☆雑談のネタ帳
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