中邑真輔が答えた「プロレスとは何か?」

5月9日に発売した直後からAmazonなどで売り切れが続出している三田佐代子さんの『プロレスという生き方』、今回は今年アメリカに渡った中邑真輔編の最終回です。人前で涙を流したことはないと語っていた中邑が、思わず泣いてしまったその場面とは? そして三田さんが思わず問いかけてしまった「あなたにとってプロレスとは?」という質問に、中邑はどうこたえたのでしょうか。

表現者は変わり続ける

 棚橋弘至は自分を、そしてプロレスをもっと知ってもらいたい一心でメディアに出続ける。テレビに出たり、ブログを更新したり、寸暇を惜しんで露出を続けている。「棚橋さんと僕とはプロレスの背負い方が違う」という中邑は、ではどういった時に自分の影響力について感じるのだろうか。

「何が自分として素直に嬉しいなって思ったりするかといえば、創作意欲をかき立てられるっていうふうに言われたりすると、何か誇らしいという気持ちになりますね。世界中の方が、例えばROH(新日本プロレスと友好関係にあるアメリカのプロレス団体)に行ったらナカムラのポスター描いてきたぞとか、缶バッジを作ったとか、Tシャツを作ったよとか言われると、自分としてはありがたい。何かを作るっていうのは結構なパワーですからね。何かの表現に続いていく、そういう動機になったというのはおおっと思います」

 恐らくそれは、彼自身が絵を描き、コスチュームを自分でデザインするクリエーターだからなのだろう。中邑は「表現」という言葉を好んで使う。彼は誰かの表現の源になれたことが、自分が有名になるとか、道で話しかけられるとか、そういったことよりも嬉しいという。中邑真輔らしい、充足感の感じ方だった。今はSNSがあるからそういった表現が自分の元にも届きやすくなった、という中邑が「さすがにこれはビビりました」といって見せてくれた写真は、アメリカの男性ファンが自分のふくらはぎいっぱいに中邑の似顔絵を刺青で彫った画像だった。相当なインパクトだった。

 棚橋弘至が入門からぶれずに自分のスタイルを貫いてきた人だとすれば、中邑真輔は変わり続けてきた人だった。自分の意図するしないを超越した存在に引き立てられ、プロレスと格闘技を股にかけて結果を出しつつも、ファンにはその思いがなかなか伝わらなかった若手時代。棚橋弘至とタッグを組んで会社に売り出されたり、蝶野正洋の軍団に加入したりしたこともあれば、矢野通と共にCHAOS(ケイオス)というヒールユニットを作った当初は会社に抗議の電話が相次いだという。

 もがき、悩み、それぞれの時に結果を出しつつも、自分にしっくりと来る、自分が美しいと思う形を中邑は探し続けた。そして全てを解き放ち「自由」を手に入れた時に、いまの最も美しい、中邑真輔が人として、レスラーとして歩んできた道のりを全て「落とし込める」スタイルを手に入れたのだ。ジャッキー・チェンも、絵画も、総合格闘技もアントニオ猪木も全て、彼は自分の美しいと思う形に落とし込んで、いまの中邑真輔はそこに存在している。

「人前で泣くのは好きじゃないんですよ」
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プロレスという生き方

三田佐代子

能力や技術だけでなく、己の肉体と肉体、そして人生をぶつけあうのがプロレス。プロレスは幾度かの困難な時期を乗り越えて、いま新たな黄金時代を迎えています。馬場・猪木から時を経て、現在のプロレスラーは何を志し、何と戦っているのでしょうか。長...もっと読む

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コメント

fmkdosue もう響かないな…。 3年以上前 replyretweetfavorite

345m 中邑選手の章最終回です。WWEデビュー戦についても入れました。この連載でプロレスちょっと面白そうだぞ?と思った方はぜひ「プロレスという生き方」本の方も読んでみて下さいね。 3年以上前 replyretweetfavorite