僕たちを不自由にする「国境」は頭のなかにある

急激に進むグローバリズムや周りのアジア諸国の躍進によって、日本は今、苦境に立たされているように思えます。それでも堀江貴文さんがすべての日本人に「君はどこにでもいける」と伝える理由とは。
出所から2年半の間に、28カ国58都市を訪れた堀江貴文さんが世界で考えました。
早くも6万部突破の書籍『君はどこにでも行ける』を、特別掲載いたします。

ハリウッド映画にナチュラルに登場する「サヨナラ」   

 日本政府観光局の発表によると、2015年の訪日観光客数は1973万7000人。前年より47 ・1%伸びた。この数値は統計を取り始めた1964年以降、最大の伸び率となった。そして1970年以来、45 年ぶりに日本に訪れた外国人旅行者の数が出国する日本人数を上回ったのだ。

 世の中にインバウンド(海外から日本へ旅行に来る外国人旅行者の総称)という言い回しが、すっかり定着した。国内の主要な観光地で、外国人を見かけない日はもうないと言っても過言ではない。僕の予測では10 年いや5年後には、日本を訪れる外国人の数は1億人に到達すると思う。

 そのうち短期滞在をふくめ、外国人が国内に2〜3000万人いる状態となる。国内の2 割ぐらいの人が、日本人以外の国籍を持つ異邦人で占められる社会が、ほぼ確実にやってくる。そうなると移民解禁がどうのこうのという論争自体、無意味になる。

 国の方針が決まる以前に、日本人は外国人と一緒に暮らし、新しい文化を築いていかざるを得ない。「どこの街でも普通に外国人とすれ違う」「外国人が隣の部屋に住んでいる」「外国人と一緒に働いている」のが移民国家の景色だとするなら、日本は事実上、移民国家のスタートをきっているのだ。

 僕はそれを歓迎している。というか、はっきり「日本と海外の境はなくなる」流れになっているのだから、みんな適応しないとダメだよ、という気持ちだ。


 2015年に公開された、アン・ハサウェイとロバート・デ・ニーロが共演した映画『マイ・インターン』をご存じだろうか。

  アンが演じるファッションサイトの社長、ジュールズのもとで、デ・ニーロが演じるシニアインターンのベンが雇われる。バリバリのキャリア女性が、70 歳の新人アシスタントのアドバイスによって成長していく、心温まる友情物語だ。

 劇中、とても印象的なシーンがある。

 ベンとジュールズが別れるとき、日本語で「サヨナラ」と言うのだ。特に日本文化をネタにするようなシーンではない。上司と部下が別れ際にかわす挨拶でナチュラルに「サヨナラ」が使われている。違和感がなさすぎて、逆に印象に残った。日本人が冗談交じりに、チャオとかアディオスと言うのと、ノリは近い。

 時代はそういうところに来ているのだなと、あらためて再認識した。海外のものが流れこんでくるように、日本のものも海の外へ、自然に流れ出ているのだ。

 他にも、最近旅したペルーのリマでの話。市内で最も人気のあるレストランの店名は、何かご存じだろうか? 『まいど』なのだ。南米中のグルメたちの間で大人気の店なのだが、日本料理とペルー料理がフュージョンした料理が出るらしい。

 つまり、日本と海外を区分けしてしまうことが、ナンセンスというか、急速にあらゆる文明は融和している。国境によって隔てられていたものが、引き寄せられるように混じり合っていく、大きな流れが、はっきり認識できるだろう。

 重ねて言うが、日本人のマインドが変わるまで、あと30 、いや20 年もないと思う。いまこの瞬間、生きている人の大部分が、まだ生きている時代だ。

 読者の中には子どもがいて、彼らに人生を教えていかないといけない責任を負っている人もいるはず。どう生きたらいいのか?なんて、不安をつぶやいている時間は、あまり残されていないのだ。グローバリズムで、小さな不安はきっとなくなる。なくなるというより「不安がってる場合ではない!」というのが実情だ。

 いまアジア諸国の脅威に戸惑ったり、外に出ないで引きこもるのも、別にいいけれど、それで問題なく暮らせる時間はあと20 年もない。

 僕がずっと前から言い続けている、「好きなことを好きなだけやる」生き方が、より明確に価値を持つことになるはずだ。国境や言語など、かつては乗り越えるのが困難だった壁が取り払われていくことで、あらゆるチャレンジが容易になっていく。

「イヤなことを我慢して努力している」人が評価される時代は終わりだ。

「好きなことをしている人がビジネスでも人生でも、いちばん強い」時代へ、日本も移行するだろう。いや、実はもとからそうなのだけど……。

 もっと本質的な意味で、好きなことをする、好きなことを見つけるための社会が、つくられていくと思う。

 未来は、いいことずくめだ。

 いまがどうしても不安だというなら、来るべき未来まで、じっとしていてもいいだろう。好きなことが、いま見つからなくても、君の知らなかった新しい何かが、海の外から届けられるかもしれない。

 ただ覚えていてほしい。世界も日本も勝手に変わっていく。君も好きにしたらいいのだ。

僕たちを不自由にする「国境」は頭のなかにある  

 〝ラエトリの足跡〞をご存じだろうか。

 アフリカのタンザニアのラエトリ遺跡で見つかった、人類最古の足跡だ。およそ360万年前のアファール猿人の、3人家族が残したものだという。

 人類が二足歩行していた最古の直接的証明となっているが、研究ではそれよりさらに200万年も前に、人類は歩き出したとされている。アフリカで誕生した人類は、しばらく定住を続けていたようだが突如、大陸をわたる旅を始めた。それが何のきっかけだったのか、人類学者たちの間でも、まだよくわかっていないらしい。

 天災によりアフリカでの生活環境が変わり、食料を得るため、出て行かざるを得なかったとか、原始的な交易の文化が始まったとか、有力な諸説はある。けれど裏づけの取れた正解の説はない。

 険しい山を越え、手製の船で海を渡り、命がけの冒険をしてまで、6万年もかけてアメリカ大陸の最南端へたどり着いた、人類の原動力は、何だったのだろう?

 僕は、とてもシンプルな理由だったと考えている。「見たことのないものを、見に行きたかった」のだ。

 変化を受け入れ、常に進化してく、人が人たりえるための宿命によって、祖先たちはつき動かされ、命がけの〝グレート・ジャーニー〞に出て行ったのだ。

 その根源的な衝動は、僕のなかにもある。その場にしかないもの、そこにしかないものを見たい、楽しみたい、味わいつくしたい、だから日本を出て、世界を飛び回っている。

 僕はしばしば「堀江さんは日本にこだわらない、最先端の生き方をしている」「国境に縛られない、まったく新しいスタイルの人生ですね」などと言われる。どう評されてもいいのだけれど、自分が最先端を行っているとは、思えない。国境を越えるとか、ノマドスタイルの実践者だとか、そんな感覚はまったくない。

 アフリカで生まれた祖先たちが、「あっちの地平線の向こうにおいしい水があるらしい」という情報を得て、歩き出した気持ちと、変わりがないと思う。

 行きたいから、行く。行きたくなければ、行かない。それだけのことなのだ。

 もしかしたら僕が実践している世界の周遊は、新しいのではなく、逆に古い、人類の祖先返りに近い、本能的なライフスタイルなのかもしれない。

 本書を執筆しながら、世の人たちのことを、深く考えていた。特に若い人について。例えばいま、この本を読んでいる君に問うてみたい。

 国境とは何か?

 国境というものは、それぞれの国家の主権の及ぶ、陸地か海上に引かれたラインのことだと思っているのではないだろうか?

 常識の知識としては、間違っていない。でも、君たちがとらわれている本当の国境は、別のものだ。

 君たちの国境は、頭のなかにある。

 面白いことがない。世の中、つまらないことばかり。格差の広がる日本に明るい未来はない……などと、ネガティブな思いこみで、いろいろなチャレンジをしないで生きている。

 そして「日本にいて日本が褒められていれば安心」「外国暮らしは言葉が通じないから苦労するに違いない」「旅行はお金がかかるから行きたくない」と、自らの動き出しを制限している。

 この意識を占めている、強いストッパーが、君のなかの国境だ。

 国境をなくす生き方というのは、君自身のマインドを変えること。パスポートを手にしてお金とスマホを用意して、飛行機に乗るのは、単なるひとつの手段でしかない。頭のなかの国境を消すことが、君を本当の意味で世界に飛び立たせる。

 何度も述べてきたけれど、実際に日本を出ていかなくても全然かまわない。頭のなかの国境がなくなれば、日本の田舎暮らしでも入ってくる情報の質は、格段に上がる。

 飛行機の搭乗券を買うより、楽なことのはずだ。

 頭のなかの国境を消そう。そうすれば君はどこにでも行ける。


激変する世界、激安になる日本。世界中を巡ってホリエモンが考えた仕事論、人生論、国家論。


『君はどこにでも行ける』堀江貴文

はじめに 世界は変わる、日本も変わる、君はどうする
1章 日本はいまどれくらい「安く」なってしまったのか
2章 堀江貴文が気づいた世界地図の変化〈アジア 編〉
3章 堀江貴文が気づいた世界地図の変化〈欧米その他 編〉
4章 それでも東京は世界最高レベルの都市である
5章 国境は君の中にある
特別章 ヤマザキマリ×堀江貴文[対談] 無職でお気楽なイタリア人も、ブラック労働で  辛い日本人も、みんなどこにでも行ける件
おわりに

この連載について

初回を読む
君はどこにでも行ける

堀江貴文

街角で〝爆買い〟する中国人観光客を横目で見た時に感じる「寂しさ」の正体はなんでしょう。出口の見えない不況の中で、気づけば日本はいつの間にか「安い」国になってしまいました。 出所から2年半の間に、28カ国58都市を訪れた堀江貴文さ...もっと読む

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johonch 堀江貴文 著 エッセイ「 9ヶ月前 replyretweetfavorite

areluya1721 > そして「日本にいて日本が褒められていれば安心」「外国暮らしは言葉が通じないから苦労するに違いない」「旅行はお金がかかるから行きたくない」と、自らの動き出しを制限している。 出典:https://t.co/hzs1HhScef 1年以上前 replyretweetfavorite

areluya1721 >君たちの国境は、頭のなかにある。  面白いことがない。世の中、つまらないことばかり。格差の広がる日本に明るい未来はない……などと、ネガティブな思いこみで、いろいろなチャレンジをしないで生きている。 出典:https://t.co/hzs1HhScef 1年以上前 replyretweetfavorite

tubasa25masami1  能動的に。 1年以上前 replyretweetfavorite