グローバリズムは国境も不安も消していく
本書を執筆中、各方面から「堀江さん、日本人はこれからどうしたらいいですか?」「外に出ていかない若者は、どうすればいいですか?」という質問を受けた。
これをすればベストだとか、最良の選択はどこにもない。でも、僕なりに考えた、何らかの果実を得やすい方法、いまより少しは人生の楽しみが増えていく思考法を、いろんなメディアで発信し続けてきた。
何度も言うけれど、彼らの感じているストレスのほとんどは、思いこみ。自分でつくった思いこみにとらわれ、行動を規制する壁を自分でつくりだし、「行き場がない」「先が見えない」と悩んでいる。その思いこみを解くために最大限有効な言葉を、何度も、繰り返し、たくさん投げかけてきた。
だけど日本人、特に東日本大震災以降の若い世代の閉塞感というか、言いしれない将来への不安、外に出たくない恐怖心は思いのほか強かった。
洗脳は、いまも解けていない。おそらく、なかなか解けないだろう。
僕は糸井重里さんと対談したときに、堀江さんは本気の〝おせっかい〞だ、と言われた。そうだ。僕はおせっかいだけど、基本的に、みんなと一緒に、豊かで濃密な人生を体験したいと考えている。僕の見ている最高に楽しい風景を、みんなにも見てほしい。
僕の発信作業は、決して賢者が弟子に教えを説くような、偉そうなものではない。堀江貴文という43 歳の男の、精一杯のおせっかいなのだ。
でも、そのおせっかいは簡単には受け止めてもらえない。それどころか、炎上することもたびたびだ。
「堀江の言うことは間違っている」「弱者の現実がわかっていない」「前科者・拝金主義者のくせに偉そうに」……など。正直、無力感にうちひしがれる瞬間もある。
どれだけやっても、日本人の思いこみは強すぎで、絶対に変わらない。これが悲しいかな、現実だった。
その一方で、ふと気付いたことがある。気付いたというほどでもないのだけれど、事実として述べておきたい。
僕は世界中を旅して、グローバルの潮流を全身に浴びてきた。日本人がどうとか、日本限定の未来像を考えたことは一度もない。大きな視点で国家・地域を考えている。
すると、各国の経済状況や観光地のクオリティ、市民たちの暮らしぶりから、見えてきたものがある。国レベルの不安や民族の情緒的な動揺は、グローバリズムの到来によって次第に収まり、人々の不安も同時に、波が引くように静かに消えていく現象が、世界各地で起きている。
本書で紹介した中国、タイの隆盛やヨーロッパ諸国の都市の成熟など、その延長線のものだろう。国境を消していくのと同時に、民族の積年の悩みや不安の大部分をも消していく。それがグローバリズムの力なのだ。
恩師の船曳建夫先生の著書『「日本人論」再考』を筆頭に、優れた人類史研究家は「日本史は西洋の地域的歴史に含まれないということが、日本人のアイデンティティを確立した」という趣旨の論を述べられている。つまり日本人が、自身の基盤となるアイデンティティとして、自ら島国で成り立っている「日本」人を採用してきた。