寿司を握るために20年の修行は必要ない

一時期、SNSで物議を呼んだ堀江貴文さんの「寿司屋での修行は無意味」という大胆な意見。堀江さんの真意はどのようなものだったのでしょうか?
出所から2年半の間に、28カ国58都市を訪れた堀江さんが世界で考えました。
早くも6万部突破の書籍『君はどこにでも行ける』を、特別掲載いたします。

寿司は20年修行しないと握れないのか   

 いまの日本人が、どれだけ思いこみにとらわれているか。日本の食文化を例に、説いてみよう。

 日本食が世界的にみて極めて高いレベルに発展したのは、規制の緩さが大きな理由のひとつだ。

 日本は実は、飲食店を開くためのハードルがとても低い。食品衛生責任者、火元責任者など最低限の管理人を申請すれば、だいたいレストランも小料理屋も開ける。寿司屋も同様だ。厨房に調理師、栄養士が常駐しなければいけない義務はない。地方のサラリーマンが退職して、特に料理の資格はないけれど、うどん店や喫茶店をオープンする話は多い。規制が緩いからできることだ。

 一方で欧米は新規の料理店を開く規制が、めちゃくちゃ厳しい。どんなに資金があっても、新規の開店ライセンスはなかなか下りない。

 ロンドンやパリなどでは、飲食店を新規で開くのはかなり難しいだろう。店をやりたければ、閉めてしまった既存の店からライセンスを譲ってもらうほうが良いと思う。また酒販売のライセンスは、別の法制をクリアする必要があるので大変だ。火元管理も厳重で、日本のように客間に七輪や天ぷら鍋を持ってくるなど、ほぼ許されない。

 シンガポールは、飲食店の従業員全員に、講習義務を課している。英語の試験で全問正解しないと、店長だけでなくホールスタッフも、店に立ってはいけないのだ。

 営業時間についても、日本のように一部で深夜営業も認められている国や都市は少ない。

 さまざまな点で、日本の飲食業は規制が緩いのだ。それはグローバル社会で、どこよりも早く優位をつかめたポイントのひとつだと思う。規制がないから、自由競争が進んだ。飲食店同士が切磋琢磨して、サービス向上に努め、質の劣る店は淘汰されていった。長年かけた自由競争の結果、いまの日本料理のクオリティが築かれたのだ。

 ただ過度な自由競争は、負の面もある。ブラック労働が当たり前となる土壌もつくりだした。例えば寿司屋の修業。以前、SNSで「寿司屋での修業は無意味」というような意見を述べたら、ものすごい炎上してしまった。

 修業こそすべて、辛い修業に耐えるのが、真の料理人の道だと思いこんでいる人が多い。想像以上に多い。修業だと言いながら実態は鉄拳制裁、しごき、イジメなど、パワハラの温床だと思うのだが……。

 僕に批判をぶつけてきた人たちは主に「高い技術は時間をかけないと習得できない」というのが言い分らしいけど、それはどうなんだろうか。

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君はどこにでも行ける

堀江貴文

街角で〝爆買い〟する中国人観光客を横目で見た時に感じる「寂しさ」の正体はなんでしょう。出口の見えない不況の中で、気づけば日本はいつの間にか「安い」国になってしまいました。 出所から2年半の間に、28カ国58都市を訪れた堀江貴文さ...もっと読む

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コメント

nigoldeneye1992 https://t.co/MHOgY1TR9N 3年以上前 replyretweetfavorite

kazuki_mst 同じような理屈で、根性論抜きで(理にかなった)練習してきて技術がすごいプロ野球選手とか出てきたらもっと面白くなりそう 4年弱前 replyretweetfavorite

terry_i_ 日本の外食産業って規制が緩いんだ。それを活かすなら、職人気質なんて余計に無意味だね。現に、「鮨 千陽」「TIRPSE」等、若くして成功する店が増えている。|堀江貴文(@takapon_jp) 4年弱前 replyretweetfavorite

noujirushi ラーメン発見伝のセリフみたいだけど、味や技法だけでなく、重層化する情報に対しても価値が生まれている以上、文化としての下地に精神論が含まれるのも仕方ないと思う 食文化ってそういうもん 大切なことは時間を何に投資するのか考えること https://t.co/oon7G25eBm 4年弱前 replyretweetfavorite