日本人はいつからたけのこを食べていたのかと調べると、なんと「古事記」の神話に、その名がありました。日本の国土や多くの神々を産んだ、イザナギとイザナミという夫婦の神様をご存知ですか。女神のイザナミは、火の神を産むと、やけどを負って死んでしまいます。妻恋しさに黄泉の国まで行った夫のイザナギ。腐った彼女の姿に驚いて逃げますが、恐ろしい追手がせまります。そのとき、イザナギが櫛を投げつけると、たけのこが生えて、追手がそれを食べている間に逃げたと書かれているのです。黄泉の国の住人も、たけのこの味を無視することはできなかったようです。
“たけのこ”とひと口に言っても、種類はさまざま。昔から日本に生える真竹まだけや根曲がり竹は、5~6月ごろにたけのこを出します。じつは、たけのこの最盛期は初夏。夏の季語だということは、知られていないかもしれません。春にたけのこを出す孟宗竹は、江戸時代に中国からもたらされました。細長いたけのこが多いなか、孟宗竹のそれは大きくて肉厚、白くて柔らか。とてもおいしいので、各地で栽培されるようになりました。ちなみに孟宗とは、中国の三国時代の人。たけのこを食べたがる母のため、冬の竹林で雪を掘りながら願ったところ、たけのこが出たという故事が、名前の由来になっています。
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