町田康 後編「パンクの精神で文章も書いたら、自然といまのようなものになりました」

パンクロッカーとしてデビュー後、小説を発表し、芥川賞、川端康成賞、谷崎潤一郎賞など、数々の賞を受賞。その自由で独特な文体に、熱狂的な読者が多い町田康さん。今回は、自宅のリフォームについて、書き記したなんともおかしみにあふれた最新エッセイ『リフォームの爆発』を入り口にお話を伺いました。リフォームについて書く中で見えてきた、文学の役割とは一体何なのでしょうか。


で、またリフォームをする。また、不具合が生じる。また、リフォームをする、ということを繰り返す。

私はこれを、「永久リフォーム論」と呼んでいる。

『リフォームの爆発』より

体験と想像力がない交ぜになって書かれていくことで、さまざまな発見も起こる。町田さんが『リフォームの爆発』を書き継ぐうえで見出した例を挙げれば、「永久リフォーム論」というものがある。

 家が古くなって不具合が目立ってくると、人はリフォームをしますね。でも、一部分に手をつけると、その過程でほかの不具合が見えてきたり、従来の部分が汚く見えたりして、他部分もやりたくなる。それがずっと続いてしまうのが、永久リフォーム理論。つまりはいったん始めてしまうと、ずっとリフォームし続けることになる。

ということは、いったんリフォームをしてしまった町田さんは、すでに永久リフォーム論の輪のなかに入っている?

 危ないところですが、僕自身は資金的その他、いろんな問題によって、まだ永久の轍にははまっていないのですけどね。

リフォームは、やはり文学と深くかかわっているというのも、書き通すなかで得た大きな発見のひとつ。

 実際のリフォームって、けっこうありきたりなかたちに縛られていると思うんですよ。リフォームを思い立つ個人の事情はそれぞれ切実で、そこは疑い得ないんですが、思う描くイメージはじつはかなり似通っている。“夢のある生活”“豊かな暮らし”みたいな、まやかしの広告的な設定にみんな毒されていて、そういうプリセットな物語に沿って決定を下してしまう。ちょっとまじめな人だと、“自然との共生”とか“エコ”とかってキーワードが出てきて、やっぱり縛られてしまいますね。

 リアルな話のはずのリフォームが、じつはわりとメルヘンチックなOSによって動いているんじゃないか。今回リフォームについて書いていったのは、そこから脱して、解毒することはできないかなという意味もあったんです。

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山内宏泰

文学とは、なんなのか。文学者たちは今をどうとらえ、いかに作品に結実しているのか。言葉に向き合う若き作家たちの「顔が見える」インタビューシリーズです。

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コメント

OsyaberiArt パンクの精神で… 3ヶ月前 replyretweetfavorite

reading_photo cakes連載「文學者の肖像」、GW中にこちら公開されております。 1年以上前 replyretweetfavorite

dek_nobo しみじみおもしろい。やっぱこれだ。 https://t.co/1czwltkUDm 1年以上前 replyretweetfavorite

makimuuuuuu うわああああああああああ「文学者の肖像」がついに 1年以上前 replyretweetfavorite