で、またリフォームをする。また、不具合が生じる。また、リフォームをする、ということを繰り返す。
私はこれを、「永久リフォーム論」と呼んでいる。
『リフォームの爆発』より
体験と想像力がない交ぜになって書かれていくことで、さまざまな発見も起こる。町田さんが『リフォームの爆発』を書き継ぐうえで見出した例を挙げれば、「永久リフォーム論」というものがある。
家が古くなって不具合が目立ってくると、人はリフォームをしますね。でも、一部分に手をつけると、その過程でほかの不具合が見えてきたり、従来の部分が汚く見えたりして、他部分もやりたくなる。それがずっと続いてしまうのが、永久リフォーム理論。つまりはいったん始めてしまうと、ずっとリフォームし続けることになる。
ということは、いったんリフォームをしてしまった町田さんは、すでに永久リフォーム論の輪のなかに入っている?
危ないところですが、僕自身は資金的その他、いろんな問題によって、まだ永久の轍にははまっていないのですけどね。
リフォームは、やはり文学と深くかかわっているというのも、書き通すなかで得た大きな発見のひとつ。
実際のリフォームって、けっこうありきたりなかたちに縛られていると思うんですよ。リフォームを思い立つ個人の事情はそれぞれ切実で、そこは疑い得ないんですが、思う描くイメージはじつはかなり似通っている。“夢のある生活”“豊かな暮らし”みたいな、まやかしの広告的な設定にみんな毒されていて、そういうプリセットな物語に沿って決定を下してしまう。ちょっとまじめな人だと、“自然との共生”とか“エコ”とかってキーワードが出てきて、やっぱり縛られてしまいますね。
リアルな話のはずのリフォームが、じつはわりとメルヘンチックなOSによって動いているんじゃないか。今回リフォームについて書いていったのは、そこから脱して、解毒することはできないかなという意味もあったんです。
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