「寒い……」私ははみ出した左手の冷気に耐えきれず目を覚ました。
どこか身体も緊張している。狭いシングルベットで寝返りを打った瞬間、昨夜の記憶が一気にフラッシュバックされた。
7時間前。
私は桜井雅人にトイレの出待ちをされ、猛烈で濃厚なキスをされた。そしてそのまま合コン会場を抜け出し自宅へ着くなり、ベッドに押し倒された。それからのことは思い出すだけで顔が熱くなる。桜井雅人はその鍛えられた肉体とは裏腹にとても優しく繊細なタッチで私を隅々まで愛撫した。そして「綺麗だ」「セクシーだ」と耳元でささやき続けた。はじめは恥じらいがあったものの、彼の巧みな指と言葉に支配された私は、やがて羞恥心というものを捨て去った。何もかも解き放たれた私は、自由に大胆に身体を動かし喘いだ。こんな経験は初めてだった。
ふと隣をみると、子犬のような寝顔でスヤスヤと桜井雅人は寝息を立てている。彼の寝顔は少年のようだが、昨夜の彼は大人の男だった。野獣といってもいい。このギャップが私をさらに虜にさせた。男によっては、朝の寝顔で百年の恋も冷めたりもするが、桜井はハゲてるにも関わらずそんな残酷なことはなかった。ハゲなのに、可愛いとすら思えた。