多くの人からレジェンド・ユウカと呼ばれている私。
結婚市場に残された最後の掘り出し物なのだそうだ。
今日、私は後輩の早希が誘ってくれた「異業種交流会」というやつに来ていた。三十という垣根を超えてからは「合コン」はすべて「異業種で働く男女が美味しい料理を食べる会」に言い換えていた。©ジェーン・スーさんが言う通り、合コンという言葉の持つ軽さとアグレッシブさは、流石に三十路にはキツイ。そして、合コンの内容も少し様変わりしている。
選ばれる店が新宿・渋谷の流行りのスタイルのお店から丸の内や日本橋あたりの「え? ここお店だったの?」なんていう凝った門構えの店にクラスチェンジしていた。お店は、後輩の早希の「安い店には安い男しか来ない」という持論から選ばれているらしい。私は、隆二と別れてから5回ほど、このいささか窮屈な男女の品定め会に参加していた。毎週一回は参加している計算になる。
「DENTSUの桜井雅人です〜。早希ちゃんは俺の大学の後輩です」
高野早希は私の5つ年下の会社の後輩だ。つまり29歳。私は早希とはプライベイトの話もよくしていた。早希に彼氏と別れたことを話すと早々にこの異業種交流会をセッティングしてくれたのだった。早希の合コンセッティング能力はズバ抜けているが、その参加基準が厳しいことも社内で有名だった。会社内でも一部の容姿が優れた人にしか声がかけられない。早希は、以前から私を頻繁に異業種交流会に誘っていたが私は「彼氏がいるから」と全部断っていた。今は、断る理由がない。今日の相手はDENTSUというのだから、前評判通りの実力だったが、他の参加者の容姿も皆モデル並みの端麗さだった。
「それにしてもみんな綺麗すぎて、ちょっとテンパっちゃうな。早希ちゃんの周りには美人さんしかいなんだな」
「先輩お上手ですね。まぁ、類は友を呼ぶって言いますからね」
冗談めかして早希は口にしたように見えたが、まんざらでもない様子だ。今日の参加者はレベルが高い。この合コンへの参加者を早希は相当選抜していはずだ。現にいつもいる総務のR子ちゃんはいない。こういう仕事以外に一切手を抜かない姿勢が、彼女の幹事としての評判にも繋がっているのだろう。私はこのフィールドに選ばれていることを自覚し、早希の女気(おんなぎ)に感謝した。早希ジャパンとして胸が引き締まる思いがする。そっと、ブラジャーの紐ひねりを直す。いつでも国歌を歌う準備は万端だ。