グローバル向けの日本旅館が地方のビジネスチャンス
京都は日本旅館の名所としても知られる。
スティーブ・ジョブズが愛した『俵屋旅館』、川端康成に縁のある『柊家』など。どちらも泊まったけれど、文句なく快適で素晴らしい。
ちなみに僕はラグジュアリーホテルだけでなく、各地で有名な日本旅館にも泊まっている。普通の人より、かなりの数の宿泊施設を知っているので、僕の評価のハードルは高いと思う。
日本旅館は外貨を確実に稼げる、有望な観光資源のひとつだ。先ごろ、星野リゾート代表・星野佳路氏が東京・大手町の一等地に、『星のや東京』を開業すると発表した。客室単価は8〜10万円になるという。星野リゾートにとって国内で初めての、都市型の日本旅館。国内はもとより海外の富裕層の注目を集めている。非常に画期的なビジネスだ。
日本旅館は基本的にチェーン化されておらず、差が激しい。食事を決まった時間に食べなくてはいけない面倒なルールもある。それらの改善点を星野リゾートがクリアすれば、世界の観光客を呼びこめる事業となるだろう。
星野さんとは一度、対談でじっくりお話ししたことがある。星野リゾートは、星野さんの代になってから経営方針が様変わりした。
昔は土地建物を経営側が全部所有して、会社を運営する、垂直直下型のやり方だった。それを星野さんは、不動産をファンドなどに売り、会社の資産を手元から切り離しオフバランス化した。投資家と年いくらの利回りで、資産を回すかを契約して、自分たちは運営に特化するという経営だ。
実に理に適った方法だと思う。ホテル経営は、そもそも不動産や資産を所有する意味がない。銀行借り入れのリスクが高すぎる。バブル期のホテルは、それで多くが潰れてしまった。不動産業とホテルのオペレーション業は、ぜんぜん違うのだ。不動産は不動産のプロに預けてしまった方が賢い。
星野リゾートは、国内のさびれてしまった有名ホテルを続々と買い、投資家に土地と上物を預け、リノベーションしたホテルで運営に専念。そこでお客さんに最高の寛ぎを提供している。オペレーションと資産所有を切り離し、ミドルリスク・ミドルリターンの経営が成功している。
星野リゾートの方法は、世界的には標準のスタイルとなっている。日本のトラベルビジネスは星野さんのように、グローバルにいかに即応していくかが、今後の鍵となる。