春夏秋冬☆雑談のネタ帳

風船」は春の知らせ

ちょっと気が利かない若手社員「男子くん」の部署に、一風変わった先輩が異動してきました。「僕は暦とともに生きている」というこの先輩、毎日のなにげない会話にも季節感に溢れています。そのネタ帳は……なんと俳句の「歳時記」!
天気、服装、年中行事、動植物など、身近な話題のなかから☆キラリ☆と光る言葉を身に付けていく男子君の成長ストーリー。今日は先輩とはじめてのランチです。

男子くん 先輩、公園で一緒に昼飯どうですか

句先輩 いいですね。行きましょう

男子くん 天気いいっすね~

俳句先輩 空が晴れ渡っています

男子くん あ、風船!

俳句先輩 いやぁ、実に春だね~

男子くん ……はぁ?(この人、謎かも……??)

男子くん、驚いていますね。というより、完全に引いていますね。風船を見て春だなんて、まったくおかしな人だという目でこちらを見ています。まあ、そうかもしれません。風船と季節に関係があるとは、思わないものでしょうから。でも、実は、風船は春の季語なのです。

失礼、ご挨拶がまだでした。わたくし、少々、俳句をたしなんでおります。それでつい、風船を見て、春を感じてしまったわけです。

澄んだ青空をふわふわと上っていく、真っ赤な風船。これはまさに、春の象徴的な景色なのですよ。

男子くん 季語って、俳句の……?

俳句先輩 はい、季節を表わす言葉ですね

男子くん へぇ、風船が季語なんて意外っす

俳句先輩 そこが季語の奥深いところです

現代では、風船といえばゴム風船ですが、もともとは赤・青・黄などの五色に染めたろう紙を貼り合わせた紙風船を指していました。春祭りの神社などで子ども相手に売られていた、その名残なんですね石鹸玉しゃぼんだま風車かざぐるまも春の季語なんですよ。

春といえば、穏やかな日の光や、暖かい風が思い起こされますね。これは、日本人だからこそわかる感覚です。季語には、日本人の感性や生活風習、伝統といったものが凝縮されているのです。知っていると、日常の何気ないおしゃべりがちょっとだけ豊かになります。

男子くん そう言われると、急に風船が春っぽく感じられてきた

俳句先輩 男子くんも、すぐにいろんな季語を覚えられますよ

男子くん いやいや、覚える気ないっすけど

俳句先輩 ふふっ。さて、どうかな

つづく

作家としても注目を集める芸人が、気鋭の俳人に弟子入り。ひそやかな2年の学びを経て、果たして俳句の上達ぶりやいかに…? ピース又吉(35歳)、初めての俳句入門。

芸人と俳人

--- - "又吉 直樹" - "堀本 裕樹"
集英社
2015-05-26

この連載について

春夏秋冬☆雑談のネタ帳

堀本裕樹 /石川ともこ

ちょっと気が利かない若手社員「男子くん」の部署に、一風変わった先輩が異動してきました。「僕は暦とともに生きている」というこの先輩、毎日のなにげない会話にも季節感に溢れています。そのネタ帳は……なんと俳句の「歳時記」!天気、服装、年中行...もっと読む

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