経営は、美しさと確からしさのバランスで成り立つ|松本理寿輝(まちの保育園 経営者)〈後編〉

地域に開かれた新しい保育を実践する「まちの保育園」を経営する松本理寿輝さん。大学時代にボランティアで子どもたちとふれ合ってから、幼児教育のグランドデザインをするという目標に向かって走り続けてきました。そんな松本さんの考える経営とは、「持続的に価値創造をしていくこと」。その上で大事なのが、美しさと確からしさのバランスだと言います。

物事は、いろいろな角度から見ると俄然おもしろくなる

—大学時代の児童養護施設でのボランティアで、「子どもってすごい!」と思われたことが、保育園設立のきっかけになったとうかがいました。そのときに、保育士や教師になろうとは思わず、保育園を経営する方向にいったのは、なぜですか?

経営を学んでいるということが、ある意味、自分のアイデンティティだと思っていたんですよね。熟練の保育士の方々とお話すると、ずっと保育を学び、そこに携わってきた人にはかなわないと思いました。でも、自分には違う価値の生み出し方があるはず。大学時代に雑誌を編集していたという話をしたように、ゼロから物事を立ち上げていくことも好きだったんです。だから自分がやるならば、園を新しくつくることだと。また、このテーマが純粋に「おもしろそうだ」と思ったんですよね。心がすごく動いた。だって、保育園を自由につくれるんですよ。あなただったら、どうしますか?

—たしかに、こんな建築にして、こんな遊具を置いて、こういう遊びをみんなでやって……と夢が広がりますね。

そうなんです。自分でつくれると思ったら、どんな保育園にしようかと、胸がときめきました。教育や子どもについてもっと学びたいと思ったし、そういうときに学ぶとすごい勢いで吸収できるんですよね。そうして、学んで、考えて、構想と妄想が広がっていきました(笑)。でももちろん、すてきさや楽しさだけではダメなんです。私は、経営というのは美しさと確からしさのバランスが大事だと思っています。

—美しさと確からしさ。理想と現実のようなものでしょうか。

やはり、210人の子どもたちとその家族、そして100人近い職員を守らなければいけない現実はありますから。美しさだけでは物事は実現しないし、確からしさだけではおもしろくない。そのバランスは、保育園立ち上げを志してから、必死になって走っているうちに、少しずつわかってきました。追いつめられると、「ああ、自分ってこういう場面で、こう思うんだ」と、自分を発見することもありましたね。

—「子どもってすごい!」というのも、一つの発見だったのでしょうか。

そうですね。そして、子どものすばらしさに気づかせてくれたのは、児童養護施設のスタッフさんたちだったんです。自分一人だったら、「かわいい」にとどまっていたかもしれません。まわりのすてきな大人たちが、いろいろな見方を教えてくれた。子どもの様子が多面的に見えてきたときに、おもしろいと思ったんです。だから、それからはなるべく、自分視点で物事を見ないで、さまざまな角度から見るように心がけてきました。そうすると、多様な世界に出会えるようになりました。この感覚は、子どもたちにも体験してもらいたいです。

教育は社会を追いかけるものではなく、社会をつくるもの

この続きは有料会員登録をすると
読むことができます。
cakes会員の方はここからログイン

1週間無料のお試し購読する

cakesは定額読み放題のコンテンツ配信サイトです。簡単なお手続きで、サイト内のすべての記事を読むことができます。cakesには他にも以下のような記事があります。

人気の連載

おすすめ記事

この連載について

初回を読む
規格ハズレの履歴書たち

Tokyo Work Design Week

「自分らしい働きかたって?」「未来の自分、どんな仕事してる?」「仕事の武器って何?」――そんな疑問を持つすべての人にお送りする、「最高にワクワクする仕事」を見つけた先駆者たちのインタビュー。“新しい働きかた”をテーマとする国内最大級の...もっと読む

この連載の人気記事

関連記事

関連キーワード

コメント

yaiask まちの保育園の松本理寿輝さんのインタビュー、後編。「教育機関や非営利組織、行政においてこそマネジメントが大事」「社会に合わせて教育制度があるのではなく、教育が社会をつくる」→ 約4年前 replyretweetfavorite

hykw_NF 「すてきさや楽しさだけではダメなんです。美しさだけでは物事は実現しないし、確からしさだけではおもしろくない」松本理寿輝(まちの保育園 経営者) https://t.co/yR2jGhccz1 約4年前 replyretweetfavorite

hykw_NF 早川書房企画の連載「規格ハズレの履歴書たち」、最新インタビューです! 約4年前 replyretweetfavorite