「家訓」と「性癖」を作家と共有する
加藤 『面白ければなんでもあり』を読んで思ったのは、三木さんはつねに仕事のやり方自体を問い直しているなということです。作家さんによって接し方を変えていたりとか。
三木 常にトライ&エラーしながら作っています。この作家さんは褒めたら筆が進むぞ、とか、逆に作家さんによっては褒めても全然反応してくれなかったり。
加藤 ははは(笑)。
三木 そういう反応を見ながら、その作家さんに合った作り方を模索してます。
加藤 言うのは簡単ですけど、編集者によっては、自分の仕事のやり方を押し付けてしまうこともあると思うんですよ。
三木 自分のやり方を押し付けるのは楽かもしれませんが、みんなが気持ちよく仕事できたほうが楽しいですし、結果的に作品のクオリティも上がると思います。
加藤 作品を書きはじめる際に、必ず「家訓」を決めるという話もとても印象的でした。家訓って、つまり作家のやりたいことや書きたいこと、テーマのようなものですよね。
三木 やっぱり、作家さんは絶対に作品の中で譲れないポイントをお持ちなんですよ。もしこちらが修正依頼をしても、そこだけは直さない。ただ、それはとてもいいことだと思っていて。そこが個性となり、作品の売りとなる部分ですから。
加藤 本では「性癖」と書かれていましたね。
三木 性癖と聞くと怪しいイメージを持たれるかもしれないんですが、その人特有のクセやこだわりのことを指していて、打ち合わせが終わったあとに、よく「指摘を聞いてくれなかった部分はどこだったかなあ」とふり返ります。つまりそこが、作家が絶対譲れない部分、性癖なんです。「俺はこれが書きたいんだ!!」というのを持ってるわけです。そこはどんなに理不尽だろうと絶対譲らないんですよ。でも僕はそれがいいな、と思っているんです。
加藤 なぜですか?
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