笑いのカイブツ

彼女が彼女じゃなくなる前に—原子爆弾の恋・序章

物語は冒頭に巻き戻ります。ハガキ職人も辞め、東京から戻り、童貞喪失に失敗し、自暴自棄になっていたツチヤタカユキさん。そんなツチヤさんが出くわしたのは、金髪でピアスだらけの“アナタ”でした。
他を圧倒する量と質、そして「人間関係不得意」で知られる伝説のハガキ職人・ツチヤタカユキさん、二七歳、無職。その孤独にして熱狂的な笑いへの道ゆきが、いま紐解かれます。

『こんなオレと
 今まで付き合ってくれて
 本当にありがとう……』

彼女と別れた帰り道。
それは彼女が「彼女」じゃなくなる前に、打ち始めた最後のLINEだった。

アナタに初めて会ったのは、死ぬことばかり考えていた頃だった。

ハガキ職人を辞め、東京から出戻り、バイトで食いつないでいた27歳の僕は、酒に溺れた。


そこから先なんて、ないと思っていた。
そこから先なんて、なくてもよかった。

真夜中の難波の街、そこを歩く時、僕はいつも見えない吐瀉物に、まみれているみたいな感覚になる。
頭のなかの沼地に沈み込んで姿を消したカイブツのように、僕も酔いの彼方に沈んだ。每日のように吐くまで酒を飲んだ。

ピンクと二人で、オカマバーに行った。
そこで見たコントは、あまりにもくだらないコントだった。
しかしピンクは笑って言った。

「あいつら、すぐにテレビ出れるぞ」

僕は酔いすぎて、ろれつが回らなくなりながらも、こう反論した。

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笑いのカイブツ

ツチヤ タカユキ
文藝春秋
2017-02-16

この連載について

初回を読む
笑いのカイブツ

ツチヤタカユキ

他を圧倒する量と質、そして「人間関係不得意」で知られる伝説のハガキ職人・ツチヤタカユキさん、二七歳、童貞、無職。その孤独にして熱狂的な笑いへの道ゆきが、いま紐解かれます。人間であることをはみ出してしまった「カイブツ」はどこへ行くのでし...もっと読む

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コメント

pingpongdash 競技用の芸人…--原子爆弾の恋・序章  3年以上前 replyretweetfavorite

japan1111111111 2週間たったのに短い〜原子爆弾の恋・序章  3年以上前 replyretweetfavorite

theta0217 ツチヤタカユキ、まさかの恋愛エピソード…?? 原子爆弾の恋・序章  3年以上前 replyretweetfavorite

wkwkstr 原子爆弾の恋・序章  後ろから6行目の文章、ロマンチックで思わずドキッとした。 3年以上前 replyretweetfavorite