おじいちゃんになっても、ラップしていたい!
瑞木奏加(以下、瑞木) 『フリースタイルダンジョン』でバトルに入るときって、どんなお気持ちですか。R-指定さんの登場シーンはいつも「漫画の主人公みたい。かっこいい!」と思いながら拝見しています。
R-指定 かなり気持ちを入れて臨みますね。
曽田正人(以下、曽田) もともと気持ちの高め方は上手なほうですか?
R-指定 いえ、そうでもなくて。ULTIMATE MC BATTLEの全国大会UMB GRAND CHAMPIONSHIPで2012年に優勝する前は、もっと肩の力を抜いて出場するやり方でした。そのほうが頭を柔軟にできて、緊張せずフラットな気分になれたから。でも、全国大会で優勝する前に、2回連続で一回戦負けしているんですよ。そのときは気持ちが腐ってしまって、どうせ俺のやり方は人には理解されないんだよって投げやりになっていた。そうしたら、韻踏合組合のERONE(エローン)さんから「もっとわかりやすく気合入れていったらいいんじゃないか、大阪の街を背負っていくくらいの気持ちでやったら?」と言われて、それもそうだと思い直して出場したら、優勝することができました。
R-指定 それまでわかりやすい根性論は否定していて、クールにやるのがかっこいいと思っていたけれど、恥ずかしがらずに気合入れて戦ってみたら優勝できた。正面からぶつかったほうが、勝敗はともかく、少なくともいい試合ができると気づいたんですね。やっている側も観ている側もなにかを感じるというか、感動する度合いは確実に上がります。あのときのバトルに挑む気持ちは、スポ根ものの少年漫画に近かったかな。舞台袖で顔を自分でビンタしたりして。
曽田 ああっ!それはいまも『フリースタイルダンジョン』で、闘いに出る前のモンスタールームでよくやっていますよね。
R-指定 以前はもっと激しくやっていたんです。自分で自分を高めなくちゃと思って。ラップで闘っているんですけど、それって要は人間同士の闘い。人として、やるかやられるか、そういう気合いでやらないと。それだけ闘いに入り込んでいるということは、自分がキャラクターになりきっているようなところもありますね。観る側としても、「あいつとあいつがぶつかったらどうなるかな」「あいつが出たら、いまのチャンピオンなんてひとたまりもないな」とか、漫画の話っぽい楽しみ方をしてもらっているところもあるだろうし。
曽田 たしかに英雄譚として「ダンジョン」を楽しんでいる自分がいます。リアルとファンタジーの極上の融合。強烈なキャラクター、世界観、そして笑いに魅了されています。
R-指定 モンスタールームのラッパー同士はけっこう団結力があって、今日は強敵かもしれない、こっちはどう攻めていこうかなんて、一丸となって話し合ったりしていますよ。場を仕切るのはやっぱりボスキャラの般若さん。自分でスイッチを入れてキャラクターになりきることを、いちばんうまくできるのも般若さんですからね。モンスタールームの全員を勇気づけてくれる人です。
曽田 モンスタールームの大ファンとしてはたまらない話だなあ!! バトルをしているときのR-指定さんにはモンスターの凄みが漲っていますけれど、こうしてお話ししていると穏やかで超可愛らしいですね。ほかのラッパーの方々も、みなさんそうなのですか?
R-指定 ふだんから怖い人はそんなにいないですよ。ステージ上では強面ぶっていても、ステージを降りたらたいてい、ごくふつうの人です。ずっと凄んでいる人はまずいません(笑)。ただ、オーラがすごくて近づきづらい人はいますが。モンスタールームでいっしょの漢a.k.a.GAMIさんなんかそう。でも、当たり前ながらみんな人間くさいですよ。バトルに勝てばニヤニヤしながらモンスタールームに引き上げてくるし、負けたら落ち込むし。『フリースタイルダンジョン』は、ラップが大好きな、そして負けず嫌いの人たちの集まりですね。
瑞木 番組の成り行きも楽しみですけど、もうすこし長いスパンで考えてみると、R-指定さんは今後、こうなりたい! というビジョンはありますか?
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