野鳥の声がどう聞こえるか、人の言葉に置き換えることを「聞きき做なし」といいます。ホトトギスの声は「てっぺんかけたか」、コジュケイは「ちょっと来い、ちょっと来い」、ツバメは「土食って虫食って渋ーい」、だれが考えたのか、ユニークなものが多くあります。ウグイスの声は、「ホーホケキョ」。昔の人には、この鳥のさえずりが「法 法華経」と聞こえたのです。そのため、「経読鳥」と呼ばれることもあります。
ウグイスは、「人来鳥ひとくどり」という異名も持っています。その由来は、平安前期の「古今和歌集」に載ったこの歌からわかります。
梅の花見にこそ来つれ鶯のひとくひとくと厭いとひしもをる
「ひとく」は、当時のウグイスの鳴き声でした。「梅の花を見に来たら、ウグイスが『人が来る』と言っていやがっている」というのです。「ひとく」と「人が来る」をかけたのですね。
どの時代も同じように鳴いているのに、いつしかお経を読むようになってしまったウグイス。じつは「ホーホケキョ」と鳴くのは、オスだけです。縄張りを知らせ、メスを呼んでいるのです。このほか、「チャッチャッ」という「笹鳴き」や、「キキキキキッキョキッキョ」という「谷渡り」という鳴き方もあり、谷渡りは警戒音だと考えられています。
ウグイスは藪を好む野鳥で、姿を見る機会はそれほど多くありません。大きさはオスが16㎝ほどで、メスはやや小ぶり。オリーブ色や茶色に近い、思いのほか地味な色をしています。この羽色に似た「鶯色」が生まれたのは江戸時代。茶色がかった「鶯茶」とともに、品がいいと、たいへん好まれました。