人生を幸せなものにするために
それにしても、どうしてぼくは、結婚生活は面倒だなんて考えていたんだろうか。ソクラテスとの対話を経たいまとなっては、自分が何を思って『結婚はコスパが悪い』と言っていたのかさえ思い出せない。
もちろん、仮にいま大切な人がいたとして、すぐにソクラテスの言う「愛」が実践できるかというと、それは難しいと思う。けれども、愛の誓いに価値があることはよくわかるし、誓いに忠実に生きられたら幸せだということも理解できる。
それなのに、そんなあたりまえのことが、ついさっきまで、欺瞞のかたまりのように思えていたのだ。ソクラテスは、ぼくの困惑を見透かしたように、にっこり笑って言葉を継いだ。
ソクラテス「親愛なるサトルくん、キミはたぶん勘違いをしていたんだと思う。さっきも言ったことだけど、自分のことを結婚から利益を受け取る受益者のように考えるのは間違いだ。人はむしろ、結婚を通じて、相手に幸せを与えられる人間にならなきゃいけない。
だから、考えるべき問題は、自分は結婚を通じて相手を幸せにできるのかということであって、結婚が自分に何をもたらすかということではないんだ。結婚で幸せになりたければ、まずキミ自身が相手のことを幸せにできる人間になるしかないんだよ」
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