愛の重み【結婚 その3】

一見同じような意味を持つ言葉は多い。一見、微妙な違いしかないように思えることも多いが、そこが「決定的な差」をもたらすことも少なくない。
「恋」と「愛」の違いもそのひとつ。ソクラテスは以前に予告した通り、サトルに「恋と愛の違い」を語り始めた。

ギリシャ哲学の専門家による笑いあり涙ありのコミカル哲学ストーリー『ソクラテスに聞いてみた』を特別掲載いたします。

ソクラテス「さて、と。いまこそ、恋愛の話のときに予告した『恋と愛はちがう』という話をするときがきたようだね」

 そう言えば、ソクラテスは前にそんなことを言っていた気がする。でも、『恋と愛はちがう』って、いったいどういう意味なんだろうか。なんとなく、愛のほうが成熟した感じはするけど、どこがどうちがうのかと聞かれると、うまく説明できる気がしない。ぼくは俄然ソクラテスの話に興味が湧いてきた。

ソクラテス「さあ、このうえなく賢いサトルくん。まずはこのことを考えてみてくれ。キミは、恋をするとか、恋をやめるといった選択ができるかい?」
サトル「いえ、できません」
ソクラテス「そうだよね? そんなことができれば、誰も失恋から立ち直るのに苦労したりしないはずだもの」
サトル「たしかに」

ソクラテス「ところで、恋が人の意のままになるものでないとすれば、恋とは人の身に起こる出来事であって、人が行なう事柄ではない、ということになりそうだ」
サトル「そのようです」
ソクラテス「そして、人が誓うのは自分が行なう事柄である。自分の身に起こる出来事は誓えないし、仮に誓ったとしても、そんな誓いには何の意味もない」
サトル「それはそうです」

ソクラテス「それなら、以上の議論に照らして考えてみてくれ。誰かを大切にするとか、いつくしむとか、その人のために何かをしてあげたいと思うとか、その人がいてくれることに感謝するとか、そのほかもろもろのそういった事柄について、キミがどう考えるかを。そういう事柄を、はたして人は意図して行なえるものだろうか? それとも、そうした事柄も恋と同じで『人の身に起こる出来事』にすぎないのか?」

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この連載について

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ソクラテスに聞いてみた

藤田大雪

ソクラテス(職業:ホームレス?)、イカの燻製を片手に人生を語る。「よりよく生きる」ためのコミカル哲学ストーリー。 27歳、彼女ナシ。マンネリ気味の毎日を送るサラリーマンの僕の目の前に、突然、ホームレスのような姿をしたソクラ...もっと読む

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コメント

yukikrym 恋は状態、愛は行為 https://t.co/VvN6ETrosU 4年以上前 replyretweetfavorite

restart20141201 仕事だからと客には媚びへつらうのに、相手や子供には罵詈雑言の、よくできた日本の労働者(嘲) 4年以上前 replyretweetfavorite

NJG_pr 友達、恋愛、仕事、お金、結婚。ソクラテスと人生を語るコミカル哲学ストーリー『ソクラテスに聞いてみた』藤田大雪 著|cakes(ケイクス)連載もいよいよ終盤へ|【 書籍も絶賛発売中です! 4年以上前 replyretweetfavorite