サトル「どうかしましたか?」
ソクラテス「いや、キミの言うとおりだとすると、『貧しいながらも幸せな結婚生活』なんてありえないって話になりそうだけど、ほんとにそう言い切っちゃっていいのかな、と思ってね」
サトル「そういう例も、あるにはあるでしょうね。でも、そういうのはあくまで例外ですよ。普通は貧しい人が結婚してもみじめになるだけです」
ソクラテス「ぼくはそうは思わないな。それに、百歩譲ってそれが例外的だとしても、お金がないのに幸せな夫婦が1組でもいるかぎり、やっぱりさっきのキミの考えは誤りだと考えなきゃいけない。
たしかなのはこのこと、つまり、裕福であろうと貧乏であろうと、結婚によって幸せになる人も、不幸せになる人もいるってことだ。そして、お金の有無は幸福と不幸を分かつ決定的な要因じゃないってこと、これもまたたしかなわけだ」
サトル「それはまあ、そうでしょうけど……」
だからどうしたって言うんだ、とぼくは思った。そんなぼくの疑念に気づいたのか、ソクラテスは急いで言葉を付け足した。
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