愛の代償【結婚 その1】

物事によっては、何かを得た場合、代償として別の何かを失うことがある。
では、結婚はどうなのか。家庭を得たとき、代償として何を失うのか? そしてそれは「失った」という表現がふさわしいものなのだろうか?
ソクラテスは、「結婚で何かを失うこと」を極度に嫌がるサトルの態度が理解できなかった。

ギリシャ哲学の専門家による笑いあり涙ありのコミカル哲学ストーリー『ソクラテスに聞いてみた』を特別掲載いたします。

ソクラテスの私生活

 今日は無性にソクラテスと話がしたくなって、アゴラ公園にやって来た。ソクラテスはくつろいだ様子でベンチに腰をかけていたが、ぼくの姿に気づくと立ち上がり、にっこり笑って手を振ってきた。

ソクラテス「やあ、サトルくん、ごきげんよう!」
サトル「ソクラテスさん、こんにちは!」
ソクラテス「今日はなんとも気持ちのいい天気だね。キミも仕事を休んでお散歩かい?」

 ソクラテスは手を広げて大きく伸びをした。

サトル「まさか。外回りの仕事が早く終わったので、そのまま帰って来たんです」
ソクラテス
「ほう、そりゃいいね」
サトル「ええ。ずっと残業がつづいていたので、ひさしぶりに早く帰れてうれしいです」

 ぼくはすっかりソクラテスに心を許すようになっていた。こんなにも打ち解けた気分で話ができる相手は、久しくいなかったなあ。そんなふうに考えていると、ふと、ソクラテスが小脇に抱えている分厚い雑誌が目に入った。

サトル「あ、その雑誌。それって『セクシィ』じゃないですか?」
ソクラテス「ん、何だって?」
サトル「ほら、その手に持ってるやつですよ。結婚情報誌の『セクシィ』ですよね?」
ソクラテス「ああ、これ? ちょっとお湯を沸かして、お茶でも飲もうかと思って。それで燃料として拾ってきたんだ」
サトル「なんだ。ぼくはてっきり再婚相手でも見つかったのかと思いましたよ」

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この連載について

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ソクラテスに聞いてみた

藤田大雪

ソクラテス(職業:ホームレス?)、イカの燻製を片手に人生を語る。「よりよく生きる」ためのコミカル哲学ストーリー。 27歳、彼女ナシ。マンネリ気味の毎日を送るサラリーマンの僕の目の前に、突然、ホームレスのような姿をしたソクラ...もっと読む

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コメント

komachibypass そーいうノリの本なのこれw: 約4年前 replyretweetfavorite