自分の価値をみつめる【仕事 その3】

「自分が他人に受け入れられるかどうか」は自己評価ではなく他者評価で決まる。そのため「他人に受け入れられるように自分を偽る」者も少なからず存在する。
そうして作られた自分は、はたして「自分のための自分」なのか「他人のための自分」なのか。ソクラテスはサトルに問いかけていた。

ギリシャ哲学の専門家による笑いあり涙ありのコミカル哲学ストーリー『ソクラテスに聞いてみた』を特別掲載いたします。

サトル「この際だから本音を言わせてもらいます。さっきは危うくだまされそうになりましたけど、自己分析は、採用担当者にアピールするためのツールとして、間違いなく役に立ちますよ。哲学なんかより、ずっとね。

ソクラテスさんは何かと『論理的に』とか『合理的に』とかおっしゃいますけど、そもそもこの社会は、根本的に不合理なんです。やりたい仕事ができる人なんてほんのひと握りなのに、それでもみんな、必死に自分のやる気と適性をアピールしなくちゃいけない。

この生きにくい世の中でちょっとでもましな人生を送りたければ、そうするしかないんですよ」

ソクラテス「するとキミは、自分の魂がどうあるかということ以上に、自分の魂が他人の目にどう映るかを気にかけなきゃいけないと、少なくともそうすることが正当化される場合がありうるんだと、そういうふうに考えているわけだね?」
サトル「……そういう見方もできるかもしれません。ただ、ソクラテスさんは世捨て人同然だから、そういう穿った見方をするんだと思います。ちゃんと地に足をつけて現実的に物事を考えれば、そんな言い方はできないはずです」
ソクラテス「なるほど。キミの言うことには一理あるな。ぼくはたしかに世捨て人同然だし、浮世の楽しみに見向きもしないために、死人同然だって言われてるくらいだから」
サトル「ほら、やっぱり」

魂を劣悪なものにしないために

 いらだちのあまり、ずいぶん辛辣なことを言ってしまった。でも、ソクラテスはべつだん気を悪くした様子もなく、むしろぼくの挑戦を喜んでいるように見えた。

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この連載について

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ソクラテスに聞いてみた

藤田大雪

ソクラテス(職業:ホームレス?)、イカの燻製を片手に人生を語る。「よりよく生きる」ためのコミカル哲学ストーリー。 27歳、彼女ナシ。マンネリ気味の毎日を送るサラリーマンの僕の目の前に、突然、ホームレスのような姿をしたソクラ...もっと読む

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