自分の本質を分析する【仕事 その1】

ギリシャの哲学者は「私は何者なのか」という究極の命題に対峙し、自分を掘り下げていた。翻って、現代は「私はこういう人間です」と言った者勝ちで成立する、「浅い自分」で満足する者で溢れかえっている。
ソクラテスとたびたび問答を行なっているサトルもまた、「浅い自分」で満足する一人だった。

ギリシャ哲学の専門家による笑いあり涙ありのコミカル哲学ストーリー『ソクラテスに聞いてみた』を特別掲載します。

汝自身を知れ

 今日は、ソクラテスにどうしても聞きたいことがあった。目的買いならぬ目的会いで、ぼくはいつもの公園に足を運んだ。

 夜だとわからなかったけど、昼間に行くとアゴラ公園には、2軒のブルーシート・ハウスが建っていた。1軒は年季の入った感じだが、もう1軒は真新しいブルーシートで覆われている。たぶんどちらかがソクラテスの家で、もう一方が仲間の男の家なんだろう。はて、どちらがソクラテスの家だろうか、何か目印はないものか、などと考えていると、新しいほうの家に、何やら表札らしきものがついているのが目に入った。

НΣΩΚΡΑΤΟΥΣОΙΚΙΑ

 ……まったく読めないけど、たぶんギリシャ語で「ソクラテスの家」みたいなことが書いてあるんだろう。あいかわらず芸が細かい。居住者の正体を確信したぼくは、この「エーゲ海のように青いシャカシャカした家」に向かって声をかけることにした。

サトル「こんにちは! ソクラテスさん、いらっしゃいますか?」

 シャカシャカッという音を立てて、なかからソクラテスが顔を出した。

ソクラテス「やあ、サトルくん。ごきげんよう。わざわざ訪ねて来てくれて、ゼウスに誓ってとてもうれしいよ!」

 出た、いつものオーバーアクションだ! だけど、ソクラテスの顔を見ると不思議と元気が出てくる。ソクラテスが家の外に出たのを見はからって、ぼくは本題を切り出した。

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この連載について

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ソクラテスに聞いてみた

藤田大雪

ソクラテス(職業:ホームレス?)、イカの燻製を片手に人生を語る。「よりよく生きる」ためのコミカル哲学ストーリー。 27歳、彼女ナシ。マンネリ気味の毎日を送るサラリーマンの僕の目の前に、突然、ホームレスのような姿をしたソクラ...もっと読む

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コメント

l8209636 https://t.co/1WXLb0GvLD https://t.co/tcmNEs26a1 約4年前 replyretweetfavorite

yahoaho7 ソクラテスが『汝自身を知れ』というのを広めようとしたのは、 そのこと自体が皆の為になることだと思ってたからだったのかな。 そうだったとしたら、ソクラテス、凄く好きだ。 誰もが自分の事を知りたいという欲求を持ってると思う。 https://t.co/3qZkECuGI4 約4年前 replyretweetfavorite

shimodakohei 面白かった。 https://t.co/2XPvz2zpEW 約4年前 replyretweetfavorite