ソクラテス「キミはどういう人と付き合いたいの? どういう人が好みなの?」
サトル「優しくて思いやりのある人がタイプですけど。それが何か?」
ソクラテス「そうすると、キミは向かいの席に座ったかわいい子のことを、優しくて思いやりのある人だと思っていたんだね? で、その子を横取りした隣の席の男に対して憤りを感じていると、そういう話なんだね?」
サトル「いやいや、そんなわけないでしょ! そもそも、あんな女に思いやりなんてあるわけありませんよ」
ソクラテス「優しさもないのかい?」
サトル「あたりまえでしょ! 一流企業の社員じゃないってだけで、あんな態度をとるんだから! あー、思い出しただけでムカムカしてきた」
ソクラテス「しかし、思いやりも優しさもないとなると、その女性はキミの好みのタイプと正反対の人だったってことになるよね?」
サトル「そうですね。結果的に、ですけど」
ソクラテス「それならキミは、魅力的に見えた女性の本性を瞬時に見破ることができて、ずいぶん得をしたわけだ。仮にキミが一流企業の社員だったなら、こんなふうにうまくはいかなかったろうね。うっかりだまされて、ぜんぜん好みじゃない人と付き合うはめになっていたかもしれない」
サトル「まぁ、たしかに。……でも、そんなの屁理屈ですよ!」
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