幸せになる勇気

哲人は指し示す。「問題行動には5つの段階がある」

子どもたちの問題行動には、隠された「目的」が存在する。さらに、それは5つの段階に分けて考えることができると言う哲人。第1段階は、ほめられることを目的とする「称賛の要求」。一見問題ないように思えるこの目的には、実は大きな落とし穴があるのだと、哲人は説明します。100万部を突破したベストセラー『嫌われる勇気』待望の続編『幸せになる勇気』より、第二部を特別掲載いたします。

 哲人の理屈はめちゃくちゃだ! 青年は憤怒に駆られていた。学級は、小さな民主主義国家である。そして学級の主権者は、生徒たちである。そこまではいい。しかし、なぜ「賞罰はいらない」なのか。学級が国家であるならば、そこには法が必要ではないか。そして法を破り、罪を犯す者がいるならば、そこには罰が必要ではないか。青年は帳面に「問題行動の5段階」の文字を書き留め、微笑んだ。アドラー心理学が実世界に通用する学問なのか、あるいは机上の空論なのか、ここで見定めてやる。

問題行動の「目的」はどこにあるか

哲人 なぜ、子どもたちは問題行動に走るのか? アドラー心理学が注目するのは、そこに隠された「目的」です。つまり、子どもたち—これは子どもに限った話ではありません—が、いかなる目的を持って問題行動に出ているのか、5つの段階に分けて考えるのです。

青年 5つの段階ということは、徐々にエスカレートしていく、という意味ですね?

哲人 ええ。そして人間の問題行動は、すべてこのいずれかの段階に該当します。エスカレートしてしまわないうちに、なるべく早い段階で対策を講じなければなりません。

青年 いいでしょう。では、最初の段階から教えてください。

哲人 問題行動の第1段階、それは「称賛の要求」です。

青年 称賛の要求? つまり「わたしをほめてくれ」ということですか?

哲人 はい。親や教師に向けて、またその他の人々に向けて、「いい子」を演じる。組織で働く人間であれば、上司や先輩に向けて、やる気や従順さをアピールする。それによってほめられようとする。入口は、すべてここです。

青年 むしろ好ましいことじゃありませんか。誰に迷惑をかけることもなく、生産的な活動に取り組んでいる。人の役に立つことだってあるでしょう。問題視される理由など、まるで見当たりませんけどね。

哲人 たしかに、個別の行為として考えた場合、彼らはなんの問題もない「いい子」や「優等生」に映ります。実際、子どもたちであれば学業や運動に、会社員であれば仕事に精を出すわけですから、ほめたくもなるでしょう。
 しかし、ここには大きな落とし穴があります。彼らの目的は、あくまでも「ほめてもらうこと」であり、さらに言えば「共同体のなかで特権的な地位を得ること」なのです。

青年 ははっ、動機が不純だから認めない、ってわけですか。まったくナイーヴな哲学者だ。仮に「ほめてもらうこと」が目的だったとしても、結果として勉学に励んでいる生徒ですよ? なんの問題もないでしょう。

哲人 では、その取り組みについて、親や教師、上司や仕事相手がいっさいほめなかったとしたら、どうなると思いますか?

青年 ……不満を抱き、場合によっては憤慨するでしょう。

哲人 そう。いいですか、彼らは「いいこと」をしているのではありません。ただ「ほめられること」をしているだけなのです。そして、誰からもほめられないのなら、特別視されないのなら、こんな努力に意味はない。そうやって途端に意欲を失います。
 彼らは「ほめてくれる人がいなければ、適切な行動をしない」のだし、「罰を与える人がいなければ、不適切な行動もとる」というライフスタイル(世界観)を身につけていくのです。

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幸せになる勇気―――自己啓発の源流「アドラー」の教えII

--- - "岸見 一郎" - "古賀 史健"
ダイヤモンド社
2016-02-26

この連載について

初回を読む
幸せになる勇気

岸見一郎 /古賀史健

『嫌われる勇気』から3年後、教師になった青年は再び、哲人のもとを訪ねる。「アドラーを捨てる」という、思ってもみなかった決意を胸にして。本当に「世界はシンプルであり、人生もまたシンプル」なのか。それとも「アドラー心理学」は現...もっと読む

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コメント

midori_piyopiyo みんなアドラーは読んだ? まだの人にも読みやすそうなの、cakesで連載だって♪ 【問題行動には5つの段階がある https://t.co/lyutZlRepm 】 2年以上前 replyretweetfavorite

hazkkoi "そう。いいですか、彼らは「いいこと」をしているのではありません。ただ「ほめられること」をしているだけなのです。" 2年以上前 replyretweetfavorite