インフラがないゆえのアフリカの大きな可能性
この章の最後に、僕が今、一刻も早く訪れたい国、興味を持っている地域を挙げよう。
ずばり、アフリカ大陸だ。アフリカには10 年ほど前にケニアとセイシェルに行ったきり。しかし、これから先、最も目が離せない場所といえるだろう。
各国のシンクタンクの研究でも、その明らかなポテンシャルが報告されている。グローバルの潮流は、いまはチャイナマネーを軸にしたアジア地域に傾いているけれど、数十年以上のスパンで見たとき、間違いなく爆発的成長を遂げるのは、アフリカだ。
この2、30 年で、アフリカには先進国マネーの流入が進んだ。南アフリカ・エジプト・ナイジェリア・モロッコなど、多くの国が経済立国へと急速に変わろうとしている。
アフリカは他の地域と比べて、インフラの整備が遅れている。それが実は、強力なアドバンテージとなっている。あの広大なアフリカ大陸のいたるところで、いま〝リープフロッグ(カエル跳び)現象〞が起きているのだ。
普通、技術は段階的な進化を遂げるが、従来のスタンダードなインフラの導入をひと足飛ばして、現在のニーズに合った最新技術のインフラを利用して、一気に最先端に進化する現象だ。つまり、現代の最新テクノロジーの浸透がとても速い。地下ケーブルではなく、小型衛星によるインターネット網やLTE方式のモバイル通信、3Dプリンタなど、最先端技術をいきなり導入できるのだ。その結果、これまで見たことのないイノベーティブな情報革命が起きる可能性はある。
たとえば、東アフリカの通信ビジネスの世界では面白いことが起きている。
2007年、ケニアを起点に、携帯電話を使ったM-Pesa (エムペサ)というモバイルマネーが広まった。
僕たちが利用するモバイルマネーは、基本的に、銀行口座などなんらかの決済口座と結びつけられているが、M-Pesa には口座は不要。携帯電話にそのまま、口座を開設できる。アフリカに銀行の仕組みがきちんと整備されていないことによって、可能となったシステムだ。
もともとは、携帯電話の通話時間ポイントを、利用料金の代用としたのが始まりだ。これなら手数料はかからず、料金の代わりとして遠方でも気軽に決済ができる。
M-Pesa はケニアの通信会社がスキームを整え、2010年には南アフリカのVodacom が参画。アフリカ全域に広まっている。最近ではアフガニスタン、インド、ルーマニアまで利用地域が拡大しているという。
このようなリープフロッグ現象が、アフリカの経済力をじわじわと押し上げている。
モバイルネットワークの進化も早まりそうだ。
アフリカでは各地で、携帯電話の基地局をばんばん建てている。グーグルやフェイスブックが実施している成層圏気球を利用した、衛星インターネットが先に普及して、地上インフラなんかつくらなくてもいいよね?という流れになるかもしれない。
教育は、義務教育制度を敷いている国はまだ少ないので、学校の代わりに授業アプリや受験アプリで勉強できるシステムが、採り入れられる可能性もある。一度も学校に通っていない、大学にも行っていない、だけどものすごい才能を持ったアプリプログラマーが、アフリカの奥地で誕生してもおかしくないのだ。
広大なフロンティアに潜むビジネスチャンス
アフリカはいまのところ、先進国で言うところの豊かさ、満ち足りた衣食住や娯楽などが少ない。しかし何も持っていないということは、シェアエコノミーが、たやすくできる。
シェアエコノミーとはソーシャルメディアの発達により、モノ、お金、サービスなど交易物の交換、共有によって成り立つ経済の仕組みだ。いわば情勢の変化に適応しやすい、小さな政府の確立。ヨーロッパの先進国がユーロ導入など、さまざまな試みで実現させていこうとしている仕組みを、発展途上国のアフリカが、持たざる者がゆえに、苦もなく成し遂げようとしているのは、面白い現実ではないだろうか。
アジアの経済発展も魅力だが、目先の早い人たちはすでにアフリカで、カエルのジャンプの背に乗れるチャンスを狙っている。中国が早い段階で、アフリカ進出を成功させているのは、さすがだと言えるだろう。
だが、日本も立ち後れてはいない。TOYOTAや日産自動車など自動車メーカーほか、大手企業がアフリカの法人で、しっかり地固めをしている。
個人の活躍も目覚ましい。例えば2003年に、アフリカへの中古車販売業から事業をスタートさせた起業家の金城拓真さんは有名だ。100万円の資本から、アンゴラで自動車輸出業をスタートさせ、いまは不動産・タクシー・ボトリング・ゴールド取引・機械製造工場・各種卸売などをアフリカ9カ国で展開している。現在のグループ全体の年商は300億円だという。
僕自身は、ビットコインに代表されるブロックチェーン技術を応用したビジネスを、アフリカで展開しようと計画中だ。いまは、某ブロックチェーン技術のアドバイザーを務めている。そのシステムを使えば、従来の銀行システムを、100分の1いや1000分の1ぐらいのコストで運用できるのだ。
例えば現在の日本の銀行振り込みは、日ごとに会計をシメている。あれはトランザクション(一連の取引)あたりのコストが高いからだ。ひとつのトランザクションにおそらく数百円がかかっている。だからコストを少しでも下げるため、支店単位で、まとめて決算方式にしている。
それがブロックチェーンシステムでの銀行決済だったら、ひとつの振り込みはリアルタイムで処理できる。振り込んだら即、着金。トランザクション上に発生するコストが極限まで削減できるので、安価で銀行をつくりたい途上国には、願ってもないテクノロジーだ。ブロックチェーンをうまくアフリカに導入できたら、大変な金融イノベーションが起きるだろう。そして、おそらく実現できる。先進国のような、従来のインフラの利権構造による邪魔がない。
僕のようにブロックチェーンの仕組みを理解している技術者と企業が、現地で正しく環境を整えれば、「コストをかけずに銀行ができるならいいじゃん!」というノリで、アフリカ諸国は続々導入していくだろう。
できれば早いうちにアフリカを訪れて、現地の話を聞きたい。政情不安は心配されるけれど、僕の情報ではタンザニアやザンビア、特にザンビアの首都ルサカは近代的で、比較的安全だという。
中国の圧倒的なカネの投下にはいまのところ勝てない。しかし、インフラの整っていない隙間を狙った、ビジネスチャンスはいくらでもあるのだ。アフリカの成長を体感するのと同時に、日本ではなかなかできそうにないリープフロッグ現象を、近いうちに体験したいと思う。
激変する世界、激安になる日本。世界中を巡ってホリエモンが考えた仕事論、人生論、国家論。
はじめに 世界は変わる、日本も変わる、君はどうする
1章 日本はいまどれくらい「安く」なってしまったのか
2章 堀江貴文が気づいた世界地図の変化〈アジア 編〉
3章 堀江貴文が気づいた世界地図の変化〈欧米その他 編〉
4章 それでも東京は世界最高レベルの都市である
5章 国境は君の中にある
特別章 ヤマザキマリ×堀江貴文[対談] 無職でお気楽なイタリア人も、ブラック労働で 辛い日本人も、みんなどこにでも行ける件
おわりに