アメリカには宇宙ビジネスの未来がある

宇宙ビジネスを視察するためにアメリカを頻繁に訪れている堀江貴文さん。日本経済の起爆剤となる可能性も秘めている宇宙ビジネスの驚くべき成長スピードとは?
出所から2年半の間に、28カ国58都市を訪れた堀江貴文さんが、世界を巡りながら考えました。
大反響の書籍『君はどこにでも行ける』から、特別抜粋掲載いたします。

 僕の旅の範囲は、アジアだけでない。欧米諸国、南半球に、中東や南米も旅してきた。

 アメリカは、2013年から毎年、計4回訪れている。主には宇宙事業の視察のためだ。アメリカは、ビジネス、エンターテイメントなどの最先端の潮流を感じやすく、また世界のテクノロジーをリードしている国でもある。

 ヨーロッパは、アジアとはまた別の文脈で、地域ごとに変化を遂げている。産業的には傾いているが、今は成熟した文化遺産を原資に観光立国として栄えている国もある。また、EU統合など大胆な取り組みによって、グローバルに適応していこうとする国もある。経済成長著しいアジア諸国に「過去の日本」を見るとするなら、日本より先に近代化し、成熟を迎えたヨーロッパからは、経済成長から成熟路線へ転向していく(そうせざるをえない)、「未来の日本」を考えるうえでも、役に立つ情報をたくさん得られた。

  日本のこれからを探っていくヒントになるのではないかと思う。

民間企業が主導する宇宙ビジネスの未来  

 アメリカには宇宙開発事業の関連で、ライブドア時代からたびたび訪れていた。そして2013年の末、僕が収監されるなどの諸事情があったため、実に8年ぶりにアメリカを訪れた。

 今回はビザでロサンゼルス国際空港から入国した。入国審査では日本での逮捕歴を厳しくチェックされるかと思ったが、呆気ないほど普通に通ることができた。滞在期間とか訪米の理由を聞かれる程度で、普段の渡航と変わらない。意外と向こうにとっては日本での犯罪歴は、それほど重要ではないのかもしれない。

 渡米初日はレンタカーを借りて、SpaceX 本社へ行った。ロケット開発・宇宙輸送を手がける、世界最大手のロケットファクトリーだ。イーロン・マスクが立ち上げた会社で、短期間で急成長を遂げ、現在は4000人もの従業員が働いているという。

 その工場の規模の大きさには驚いた。入っていくと従業員向け食堂があり、その横にマーリンエンジンの組み立てレーンが、ずらっと並んでいた。十数台のエンジンが常時、生産されている。その横にはロケット用の架台、着陸脚もあった。ロケットによって打ち上げられる宇宙船の着陸済みカプセルなどを見せてもらった。

 クリーンルームでは宇宙船が造られていた。細かな部品を3Dプリンターで生産している工程も確認できた。くわしくは専門的になりすぎるので省くが、この成長ぶりには目を見張った。

 アメリカの宇宙事業は、いまは政府ではなく民間企業が主導している。国からの委託産業として、育成していく流れだ。国際宇宙ステーション(ISS)の開発も今後は民間企業が手がける方向らしい。

 昔は兵器への転用を防止するため、民間企業のロケット事業への参入は規制されていたが、ビジネスとして確立されてくると、SpaceX のような動きの早い会社が伸びてくる。普通のIT企業が、普通にロケットを造っているというか、民間の世界観で宇宙ビジネスが成立している印象だ。

 その点、やはり日本は遅れている。以前に三菱重工のロケット事業も視察したが、スピード感をまったく感じなかった。テクノロジーやシステム導入など、あらゆる判断が鈍重だ。日本の宇宙産業は、いまだに政府の下請け事業の域を抜けられていないと感じる。


人口:3 億1908 万人(世界3 位)、GDP:17兆3480億ドル( 世界1位)、一人当たりGDP:5 万4369ドル(世界11 位)

 カリフォルニアのロサンゼルスの北のモハーヴェ砂漠にあるモハーヴェ宇宙港も見学した。耐用年数を終えた航空機を解体する「飛行機の墓場」と呼ばれ、マニアたちの観光地となっている。一方、宇宙関連のベンチャー企業や『スケールド・コンポジッツ』など、そうそうたる宇宙機メーカーが集まっている。

 隣接するショッピングセンターの無線ショップの店長が、宇宙港のディレクターを務めていたり、地元のおっちゃんが最先端の技師を兼任している雰囲気がすごくいい。広大な砂漠の中の田舎だけど、宇宙事業で町興しをしている感じ。

 僕の会社がロケット打ち上げの拠点にしている、北海道の大樹町も、やがてこんな感じになるといいだろう。


 そして2015年の年の瀬にも、アメリカを訪れた。2度目のSpaceX の視察だ。 
 ジェット推進研究所で惑星探査機や、火星ローバーのフィールド実験施設、Deep SpaceNetwork (深宇宙通信情報網)の管制室などを見学した。彼らの探査にかける予算は日本のJAXAの年間予算の数倍だという。相変わらず事業のスケールと、スピード感に目を見張った。うらやましい環境だ。働いてる側も、ワクワクしているだろう。

 アメリカでの宇宙事業の視察は、実りが多かった。SpaceX はIT的なやり方で、アジャイルな開発を進めていることが、よくわかる。あのスピード感と、宇宙へ行きたい! という会社全体の若いモチベーションには、大いに刺激を受けた。

 10 年ほど前、アメリカで初めてイーロン・マスクら関係者と会ったときは、宇宙事業そのものが注目されていなかった。しかし当時すでに彼らはロケットエンジンの燃焼実験には成功していた。そこからわずか10 年で世界の関心を集める、巨大プロジェクトに成長したのだ。

 すごいことではあるけれど、個人的には特に驚かない。ITのスピード感なら、10 年でこのぐらいのレベルに来るのは普通のこと。宇宙事業は今後さらに、速く進化していくだろう。

 宇宙産業には、多くの可能性が詰まっている。僕の手がけているロケット事業が、これからの日本経済の起爆剤のひとつになれば何よりだ。

 でも本当は、僕自身の願望を叶えることが最大の動機だ。人がごく当たり前に、「宇宙へ旅できる」世界を、見てみたい。

 国境を越えていくより、空のはるか彼方から国境を見下ろせる旅の方が、楽しいじゃないか。

極端な右傾化はグローバリズムの産物  

 ちなみにカリフォルニア滞在中は、10 年ぶりの大雨に見舞われた。日本の梅雨時に10 回は降るレベルの雨なのだけど、現地は停電や冠水で大慌てしていた。このぐらいで?と正直あきれた。乾燥地のため、雨にはめっぽう弱く、防災インフラはあまり進んでいないようだ。

 グルメも楽しんだ。トークイベントで訪れたサンフランシスコは特に、オーガニック食材のレベルが高かった。熟れる直前に有機農家から出荷されたアボカドなど絶品だ。

 サンフランシスコはIT企業が増え、年収1000万円以上の若い富裕層が移住してきて、食べ物のレベルも上がったのだろう。街並みもおしゃれで、いまはロサンゼルスよりも勢いがある気がした。

 そんなアメリカもヨーロッパの先進国や日本と同じ悩みを抱えている。 
 2016年米大統領選の共和党候補者で、実業家のドナルド・トランプ氏が注目されている。過激で差別的な発言で物議をかもしているが、白人保守層からの支持は高い。彼のような他国やマイノリティのことを考えない、極端に保守的な右派論者の台頭は、アメリカ社会のジレンマだろう。

 先進国に生まれたというだけでいい暮らしをしていた中流から下流の既得権益層が、グローバル化により仕事を奪われ、移民など外から流入してくる勢力を、自分たちの権利を脅かす敵だとして攻撃する。そして極右の政治家や政党が人気を集める。日本でも2014年、東京都知事選で、右寄りの元航空幕僚長・田母神氏が4位の票数を得た。

 グローバリズムは、経済国家の右傾化という影も生んでいる。これは人間という種族の性質上、仕方ないことなのかもしれない。トランプ氏が大統領に選ばれる可能性は低いと思うが、彼の人気は、オバマ以降のグローバル社会をいかに築いていくか、試行錯誤にあるアメリカの現在を象徴している。

次回は4/12更新予定


激変する世界、激安になる日本。世界中を巡ってホリエモンが考えた仕事論、人生論、国家論。


『君はどこにでも行ける』堀江貴文

はじめに 世界は変わる、日本も変わる、君はどうする
1章 日本はいまどれくらい「安く」なってしまったのか
2章 堀江貴文が気づいた世界地図の変化〈アジア 編〉
3章 堀江貴文が気づいた世界地図の変化〈欧米その他 編〉
4章 それでも東京は世界最高レベルの都市である
5章 国境は君の中にある
特別章 ヤマザキマリ×堀江貴文[対談] 無職でお気楽なイタリア人も、ブラック労働で  辛い日本人も、みんなどこにでも行ける件
おわりに

この連載について

初回を読む
君はどこにでも行ける

堀江貴文

街角で〝爆買い〟する中国人観光客を横目で見た時に感じる「寂しさ」の正体はなんでしょう。出口の見えない不況の中で、気づけば日本はいつの間にか「安い」国になってしまいました。 出所から2年半の間に、28カ国58都市を訪れた堀江貴文さ...もっと読む

この連載の人気記事

関連記事

関連キーワード

コメント

notactor 宇宙開発は民間シフトが進んでいて、もはやNASAのビジョンが常にフロンティアという時代ではない。スピードは身軽な民間の方が上なので、今NASAに必要なのは遥か先を見据えることだと思う。 |堀江貴文 https://t.co/ycWLTOCoYE 4年弱前 replyretweetfavorite

sizukanarudon 堀江貴文@takapon_jp https://t.co/LkRlVon1pY 中流から下流の既得権益層がグローバル化により仕事を奪われ、移民など外から流入してくる勢力を自分たちの権利を脅かす敵だと攻撃する。そして極右の政治家が人気を集める。 4年弱前 replyretweetfavorite

terry_i_ 宇宙事業に限らず、多くの事業は民間主導の方がスピードもクオリティも上がる。日本のアカデミック職の多くが、政府の研究費予算に金玉を握られている現状は非常に良くない。|堀江貴文(@takapon_jp) 4年弱前 replyretweetfavorite

greennail999 あなたもどこにでも行ける"@cakes_PR: 【新着】10年あれば世界から注目されるビッグプロジェクトになる  @takapon_jp https://t.co/hUBYOkXtxF" 4年弱前 replyretweetfavorite