世界に広がる日本のコンビニ
ヤマザキマリ(以下、ヤマザキ) 確かに、ヨーロッパから日本に戻ると、本当、食費がかからないなぁと思います。コンビニの食べ物のクオリティが、ものすごく高い。おにぎり1個が、とんでもないぐらい美味しい。
堀江貴文(以下、堀江) コンビニの進化は止まりません。以前、「コンビニはやがて居酒屋化する」と言ったら、そんなわけないだろう! と炎上してしまいました。
ヤマザキ でも、なるんじゃないですか?
堀江 もう、なってますよ。イートインコーナーのあるコンビニでは、夕方7時ぐらいからサラリーマンがビールとつまみを買って、晩酌しています。あれは次代の風景ですね。下手な居酒屋に行くより、飲食品の種類も店内の雰囲気もいい。チェーンの居酒屋に行くなら、焼酎とカクテル選び放題のコンビニの方が快適に過ごせますよ。
僕は実際、地方都市に仕事で行ってろくな飲食店が見つからないと、セブンイレブンで買ってきたお総菜と酒で、ホテルでひとり飲みします。それで充分、満足できます。
ヤマザキ 出張先で普通にお腹を満たすぐらいなら、いいですよね。
堀江 僕、ちょっと考えたビジネスがあって。スーパーの総菜売り場の横に、居酒屋をつくったら儲かりそうだなと。自分で直接行ったわけじゃないですけど、アイディアの原型となる店が存在します。大阪の人気飲食店があるんです。
和洋中すごいおいしい料理が次から次へと出てくる。全部美味しくてレベルが高い。ただしコース料理のみなんですよ。その場でのオーダーは受け付けないという、変なシステム。まあ別に美味しいからいいかと。だけど知り合いが、こっそり厨房を覗いてしまった。
すると料理設備はほとんどなくて、電子レンジが置いてあるのみ。その店の料理は全部、近くのデパートの総菜コーナーで買ってきたものを、盛りつけてチンして出していただけだったんです。
ヤマザキ わー、すごい話ですね。シェフの人件費がかからない!
堀江 究極に合理的な飲食ビジネスですよね。高級スーパーとかデパ地下で売ってる総菜って、レベルがすごいじゃないですか。で、絶対に売れ残りが出る。それを割引いた値段で仕入れて、安価で出す居酒屋をやったら一番儲かります。
ヤマザキ めっちゃ行きたい(笑)!
堀江 飲食業種のいくつかの規制がクリアされれば、すぐ始められますよ。コンビニのイートインコーナーは、そういう合理的なビジネスの先駆けでしょうね。
コンビニの質は今後さらに上がっていきます。いまはドトール並みのコーヒーとミスタードーナッツ張りのドーナツを売って、大ヒットしてますよね。次はオリジナルの牛丼を売り出すと見ています。
ヤマザキ どんどん便利になりますね。24時間、安全で質のいいものを売ってくれる。安全で快適なコンビニは、日本という国の安心感の象徴かもしれない。
堀江 日本のコンビニは、大変な勢いで世界に広がっています。アメリカのセブンイレブンも、日本のセブンイレブンの傘下になりました。もうアジア圏は、日本のコンビニのシステムで一本化されていくでしょう。
イタリアとかヨーロッパは、規制が厳しいので、難しいとは思いますが。
ヤマザキ 24時間空いてる店は、労働基準法でダメなんですよね。イタリアだと昼寝の時間が取れない職場なんて、許されないっていう。
堀江 なるほど。
ヤマザキ でも、イタリアにもコンビニの原型みたいな店が出てきました。24時間ではないけれど、けっこう遅くまで、休み時間なく空いています。北イタリア地方に多いですね。お昼ご飯も立ち食いで過ごすビジネスマンもいます。すこし昔だったら、ありえない。
南イタリアはまだ牧歌的というか、お昼は自宅に帰って、家族と一緒にシエスタを過ごす文化が残っています。だから南イタリアは経済が動いてないんですよ。それで北と南の格差が、広がってます。
堀江 なるほど。イタリアでもグローバル化の波は着実に浸透していると。
ヤマザキ 日本のコンビニは便利だから広まってもいいと思いますが。外の文化がどんどん入ってくる、グローバリゼーションの陰の部分も、たしかにあるでしょう。
内向きに閉じていくと超新星爆発が起こる
ヤマザキ 日本人の若い世代は海外に出なくなったと言いますけど、堀江さんと話していると、別に誰でも彼でも無理に出て行かなくてもいいんだと、あらためて思います。
堀江 内向きを悪い風にとらえすぎているんです。みんな行こうと思ったらいつだって外に行ける。だから、別に出ていきたい人は、行けばいい。だからといって、内向き=ダメという思考停止は良くない。内向きのどこがまずいのか? ということを考えないと。
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