1000年後から見る現代、『ハーモニー』、そして百合

2014年、『ニルヤの島』で第2回ハヤカワSFコンテスト大賞を受賞しデビューしたSF作家の柴田勝家さん。明日24日に新作『クロニスタ 戦争人類学者』が発売するのを記念して、読者の皆様からの質問&柴田さんの回答を連載!

柴田勝家(しばた・かついえ)
1987年東京都生まれ。成城大学大学院文学研究科日本常民文化専攻所属。
外来の民間信仰の伝播と信仰の変容を研究している。戦国武将の柴田勝家を敬愛する。


Q.民俗学を研究する柴田さんに質問なのですが、たとえば1000年後の世界において、「現代」は未来の民族学者にどのような時代だと認識されていそうだと思いますか? (りょーいち さんからの質問)

A.今の時代は「絶えず変化している流動的な大衆の時代」として捉えられると思います。 旧来の信仰(キリスト教などの主に世界宗教)は、社会のシステムと不可分に結びついていて、民族・宗教・国家が直線的に(ここにも違う考え方が沢山あって簡単には言えないですが)存在していたのが、現代では多様化を受け入れたことで、人々は複線化した「大衆」という存在に変わったと思います。大衆には決まった教えも明文化された法もなく、その時々の空気によって変化し、社会全体がアメーバのように不定形な存在になっていると思います。

 ワシの考えですが、民俗・文化は人間が集団として生きていく上で獲得したシステム(その一部かも)で、古くは神話や伝説にあった物事を再現して民族を整えたものが、次は宗教や信仰で文化圏を形成し、また次は国家という枠で統合してきたように思います。その次が大衆であるとしたら、現代は「大衆という神話」を演じて、人々の集団をまとめている時代かもしれません。

 分かり難いので『ご注文はうさぎですか?』を例にすると、「心がぴょんぴょんする」って言ってる顔の見えない集団が大衆で、それを見て自分も言おうとするのが大衆的神話の再現です。違うか。


Q.『ハーモニー』(著・伊藤計劃)の結末はハッピーエンド? バッドエンド? (フラットさんからの質問)

A.どちらとも言えない結末ではありますが、ワシ個人が社会の最大幸福みたいなものを求める人間なので、あの終わり方もハッピーエンドだと思ってます。 以前にインタビューで答えたものかもしれませんが、ワシは『幼年期の終り』など、終末感の漂う世界を描いたものが特に好きです。それも完全な破滅とかではなくて、緩やかな変化や進化の過程で、今の社会そのものが変わっていく様子が好きで、その中であがこうとする側の人間や、従っていく人間達にドラマがあると思っています。

『ハーモニー』だと、社会的なハッピーエンドと個人的なハッピーエンドが複雑に絡んでいて、そこが作品として一概に言えない部分にもなっているんですよね。今の価値観だと、社会の幸福は個人の不幸にも繋がっているし、個人の幸福を追求すると社会の不幸をもたらす結果になると思います。それが『ハーモニー』では、社会の幸福と個人の幸福を最大限に融和させようとした結末だったのかな、と。トァンの個人的な幸福がそこになかったとしても、作品の結末の段階では、既に社会の幸福に上塗りされてしまったと思います。そういう意味で、あれは社会的ハッピーエンドだったと思ってます。


Q.こんにちは。わたしは女性同士の友情や愛情を描いた作品が好きなのですが、柴田先生はどうですか? もしよければ好みのカップリングやシチュエーションなどを教えてください。 (伏見完さんからの質問) 

A.伏見先生じゃないか! なんてことを聞いてくるんだ!(歓喜)

 ワシもまた〈コミック百合姫〉を楽しんでいる身。百合の園に髭でむさいワシが踏み込んでいいものかと思い、今まで秘してきましたが、もちろん女性同士の友情や愛情を描いた作品には大いに敬意を払っております。 この辺は男子たるワシが語るには些か勇気が必要ですが、飽くまで物語上の趣味として申し上げれば、王道たる女子校生の関係性に魂の輝きを感じます。女子校であれば元より、共学であれば男子からの視線もあり、お互いの感情を秘す女子という構図に心惹かれます。いや、それだけに非ず、女性教師を慕う女子の稚気な愛情、それが本当の愛なのか悩み、応じる先生側もそれが学生にありがちな憧れの入り混じったもの程度に受け止め、本当に愛する気持ちを隠してしまうという関係性。それを乗り越え、学生は本当の気持ちを先生に伝え、先生もまた正面から向き合うといったシチュエーション。 他にも、アイドル的女子と地味めな女子の関係性も好みます。地味めな子はアイドルの奔放な性格に憧れるも、アイドルの方は本当の資質のようなものを彼女に見出して一方的に突き放し(以下略)



Q.担当アイドルとその魅力を教えてください。 (歯痛さんからの質問)

A.ワシの担当アイドルは「アイドルマスターシンデレラガールズ」の成宮由愛ちゃんです! 由愛ちゃんは当初コンプガチャで登場し、認知度の低いアイドルでしたが、ワシはその後の浴衣祭りコレクションで再登場した際に出会い、その控えめな笑顔とリンゴ飴を恥ずかしそうに頬張る姿に心を奪われました。お母さん子であり、絵を描くことが好きな引っ込み思案な少女。そんな彼女がアイドルとして人々の前に立つ、その感動は筆舌に尽くし難きもの。その後、満を持して行われたスペイン公演で初のSR化、それも上位報酬ということもあり、ワシもP業開始以来のマラソンにいったものの、7000位以内に入るのが精一杯という有様。涙を飲みつつ、800スタドリでお迎えし、なんとかリトルプリーステス由愛ちゃんに出会えました。小さな笑顔、淡い色彩の似合う彼女に、初夏のスペインの太陽も微笑みかけるのか、新緑の公園の鮮やかさが映える名シーンでありました。ワシはサグラダ・ファミリアを描く彼女に天才ガウディの片鱗すら感じ、その才を生かすべく模索していた所、今度はクリスマスガチャで再登場を果たし、ここで運命を変える13歳組との出会いに至りました。ここでの邂逅はまさに(以下略)


Q.たくさんうかがいたいので、箇条書きで質問をさせてください。

  • あだ名はありますか。〈しばりん〉とお呼びしてもいいですか。
  • どの箇所でどんなコールを入れればいいでしょう。
  • 柴田さんのようにせいいっぱい輝く星になりたいのですが、どうすればよいでしょう。
  • 『クロニスタ』の向こう側には、何が待っているのでしょうか。 (しまむーさんからの質問)


A.という訳で、ワシも箇条書きで質問を返す感じで。

  • ふーん、アンタがワシのプロデューサー? あだ名は特に無いので、しばりんでも問題ないですよ!
  • ワシがなんかの機会にゆかりんの「fancy baby doll」を歌った時に「天下一可愛いよ!」でお願いします。
  • そっと鏡を覗いたら、ちょっとおまじないをかけて自分にエールを送りましょう。
  • 『クロニスタ』の向こう側に、これから続く長い道があることを願います。ワシもまた作家として、いつかマスターピースを残せるようになります! そんなこんなで、これからも柴田勝家、頑張ります

Q.きのこの山とたけのこの里はどちら派ですか。(丹羽えまさんからの質問)

A.

 —その村のことを思い出すと、今でも寒気がするんだ。

 僕がその村を訪れた時、最初に会ったのは背の低い老婆で「よう来んさった」と声をかけてくれた。一言二言、その村のことを聞いて、それから手を振って別れた。

 次に会ったのは色黒の若い男性で、その人物は僕が老婆と話していた内容を全て知っていた。どこかで聞いていたのだろうと気にも留めなかったけれど、さらに次に会った恰幅の良いおばさんも、僕と男性の会話を全て知っていたんだ。

 少し薄気味悪く感じたけれど、小さな村では良くあることだと思って、さらに村の奥の方へと進んでいった。だけど酒屋の前で話しかけてきた老人や、材木店の中年男性、県道ですれ違った老夫婦……、出会った全ての人が僕と村人の会話の内容を知っていた。村の人間は全ての情報を共有していたんだ。

 変な気分のまま目的の神社に着いて、そこの神主に話を聞いた。すると彼は村の秘密を教えてくれた。

「この村は一つの意識で繋がっているんです」

 それはどういうことなのか。

「一つの地下茎から、全ての村人が生えているんです。全員が村という植物の子供です」

 神主は、さも当然のように言う。

「つまり、たけのこの里ですよ」



『クロニスタ 戦争人類学者』、3月24日(木)発売。

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クロニスタ』刊行記念 柴田勝家Q&A

柴田勝家

2014年に『ニルヤの島』で第2回ハヤカワSFコンテスト大賞を受賞してデビューしたSF作家の柴田勝家さん。今月24日に新作『クロニスタ 戦争人類学者』が発売することを記念して、読者の皆様から柴田さんへの質問を募集します。質問が採用され...もっと読む

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コメント

kappan 柴田勝家P、この時点ですでに百合百合いってたのかと、認識を新たにする。 https://t.co/oK0vsjZvzs 12ヶ月前 replyretweetfavorite

inhn20xx https://t.co/tTICyuXcyc 約3年前 replyretweetfavorite

dododod "こんにちは。わたしは女性同士の友情や愛情を描いた作品が好きなのですが、柴田先生はどうですか?(伏見完さんからの質問)" 3年以上前 replyretweetfavorite

ao8l22 仲がよい…… 3年以上前 replyretweetfavorite