人間の「承認欲求」がSNSを加速させる
評価が人の注目を集めるのは、どう評価されるかをみんながつねに心配しているからだ。上司はぼくの成果をちゃんと見てくれるだろうか? 先週バーで出会った、あのすてきな男性/女性は、メールをくれるだろうか?
肯定されたい、評価されたいという欲求はいつでも、人が注目を払う原動力だが、評価を求めていることをぼくらが口にすることはあまりない。注目されたいとか、人気者になりたいと望むことはタブーなのだ。評価とは、謙虚に頭(こうべ)を垂れ、黙っていい仕事をしていれば、向こうから飛びこんでくるものと思われている。だが、「いいものを作れば、お客は来る」という態度は現代社会では通用しない。
評価を求める気持ちは万人に共通するが、求める評価の種類は人によってちがう。ある人は自分の名前を新聞で見たがり、別の人は各地で熱狂的な群衆に選挙演説をしたいと願う。霊能者に会って、自分の輝かしい未来を確約してもらいたいと思う人もいるだろう。一方で、世間の注目よりも、親しい友人や恋人からちょっとした褒めことばを聞きたいだけの人も多い。内向的な人なら、自分自身より仕事の成果のほうを評価されたいだろう。自分の作品をみんなは気に入ってくれるだろうか? ブログの投稿をシェアしてくれるだろうか? ソーシャルメディアの使い方からも、評価を求める気持ちが誰にでもあることがうかがえる。
自己目的化する「いいね!」
2012年、ぼくはいわゆる「評価社会」についてブログに記事を書いた。そのなかで、ソーシャルメディアが、「いいね!」やリツイート、「お気に入り」、コメントなどで他者からの評価を求めつづける社会を作ったことについて論じた。ぼくらは自分のツイートが口コミで拡散すると興奮し、フェイスブックに気の利いた投稿をしたつもりなのに誰からもコメントがつかないとがっかりする。
リツイートや「いいね!」が登場したことで、以前よりずっと楽に評価を獲得できるようになった。評価社会の進展によって、ステータスアップデートの多くは、個性や生き方の表現ではなく、「いいね!」やお気に入りの獲得のためにおこなわれるようになった。ニューヨークタイムズ紙の記者で友人のジェンナ・ワーザムが、このことをうまく説明している。
「あなたの貢献が重要だとか、おもしろいとか、価値があると評価されると、今後もそれを続けていける社会的証明を得た気持ちになる。でもその結果、人に先んじることばかりを重視する気運が生まれる。華々しく大量にリツイートされたい、目立つところにさっそうと現れて人気をさらいたいという方向に努力してしまうのだ」
人は「自分に注目してくれる相手」に注目する
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