ラスベガスは客の「欲望」をつねにモニターしている
ラスベガスはかつてとはちがう様相を呈している。20世紀後半にかけては、観光客はカードやスロットマシン、ショーやフランク・シナトラの甘い歌声を求めてベガスにおり立った。ライブショーや、よりどりみどりのギャンブルは依然大きな魅力ではあるが、21世紀に入ると新手の客が目立ちはじめた。この客は食べたり飲んだりを楽しむために、それと有名ナイトクラブのDJを目当てに、ハイヒールやジャケット姿でベガスにやってくるのだ。
この変化で、カジノが顧客を呼びこむ手法も、収入の内訳も変わった。「プラネット・ハリウッド」「フラミンゴ」「シーザーズ・パレス」を含め、数多くのカジノやホテルを世界中に展開しているシーザーズ・エンターテイメントでは、この変化のなかで収益を最大化する役目を、CMO(最高マーケティング責任者)のタリク・ショーカットにまかせた※。(※取材後の2015年に、シーザーズは連邦破産法11条の適用を申請したが、彼らのテクニックは依然われわれの参考になる。)
「弊社では、“説得できる顧客“を見きわめて重点的に取り組むべきだと考えています」とショーカットは言う。彼の言う「説得できる顧客」とは、あるときに市場にいるが、たんにきょろきょろしているだけの人を指す。繁華街にいてイタリア料理が食べたい気分だとする。だがどのレストランを選べばいいかわからない。「そう考えているときこそが、"説得"できるときなんです」とショーカットは言う。「人がそんな気分になったときに、目のまえに居合わせるよう努力しています」
言い換えると、シーザーズは、顧客がもっとも「報酬」を欲しているときに、その目のまえにいることをめざしている。ポーカーをプレーしたいことをシーザーズに知られたら、VIPの誰かから電話があって席を提供されても驚いてはいけない。ナイトクラブのほうが好みなら、シーザーズが最初のボトルを無料にしてくれるので、ライバルのカジノクラブへ移る気が失せてしまうかもしれない。
シーザーズはどうやってタイミングよく顧客のまえに現れるのか。まず「目につくこと」に注力するとショーカットは言う。広告、グーグル検索、雑誌、独自の刊行物を活用して、シーザーズや、系列のホテルとカジノで好きなものを顧客に思い出してもらうのだ。報酬を目に見える形で示せば、モチベーションと注目が高まる。ライブショーが生き甲斐の人には、目にとまるように出演者の情報をポスターや看板広告で知らせてくれるだろう。
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