第1章 友達 どうしたら「本当の友達」はできるのか?
ゼウスに誓って、ぼくはソクラテスだけど、何か?
ソクラテスがいるアゴラ公園は、鴨川の河川敷にある大きな公園で、駅からの帰り道にある。仕事帰りに夜風にあたってビールを飲むのにちょうどよく、ぼくにとってはお気に入りの場所だ。今夜は少し寒いのに、ついいつものクセでビールとつまみを持って来てしまった。
それにしても、こんな時間にこんな場所にいるなんて、いったいどういう人なんだろう。 ぼくは、はやる気持ちを抑えきれず、公園への道のりを急いだ。
細い路地をつきあたりまで歩いて、階段を降りると、そこが公園だ。門をくぐって河川敷 に入ると……。川に沿った細長い広場のど真ん中に、見るからにあやしい人影が1つ。よく見ると、長いアゴヒゲをたくわえたハゲ頭のジイさんが、薄汚れた布を身体にぐるぐる巻きつけただけの格好で、裸足で突っ立っている。難しい顔をして、アゴに手をあてて、何やら考えごとをしているらしい。
「あの見た目、たしかにソクラテス……だよな?」
どこからどう見ても完璧にソクラテスだ。もしかして、ぼくに見せるためにコスプレをして、ずっとここでスタンバってたのか? いや、まさか、そんなわけはないよな。
……しかし、なんだよ。顔つきまで完全に外国人じゃないか。メッセージは日本語だったけど、言葉はちゃんと通じるのか? ぼくはビビりながらも、勇気を出してそのジイさんに話しかけてみた。
サトル 「あのう、ソクラテスさん……ですか?」
ソクラテス 「おわっ! えっ、あれっ、なんだここは?」
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