Q.クッキングパパと商店街とのディープすぎる関係とは?

クッキングパパの料理は、スーパーではなく、商店街と密なつきあいをしているからこそ手に入る食材で作っている。店主たちにも「岩ちゃん」と呼ばれるほど親しく、二日酔いで外に出なくとも電話1本で肉の稀少部位もオーダー可能、さらには店の隠れ名物を作るプロデューサーとしても活躍している。そんな商店街にも時代の波が押し寄せて衰退していく。そこで救世主ハイパーフードプロデューサー・荒岩が出した起死回生の策とは……。

A.荒岩の無理めなオーダーにきめ細かく答える花椎商店街とは、顧客の域を超えた関係性! クッキングパパは花椎商店専属ハイパーフードプロデューサー!?

家庭料理から豪快なパーティ料理、聞いたこともないような外国の料理まで作る荒岩。その荒岩が普段買い物をしているのは、スーパーやデパートではなく近所の商店街だ。

連載初期の荒岩は2つの商店街を使い分けている。

ひとつは荒岩が勤めている金丸産業の近くにある「柳橋連合市場」。海産物関係がとにかく豊富で、プロの料理人も利用する商店街。

もうひとつが家の近所の「花椎商店街」。こちらは八百屋・肉屋・魚屋などがそろう日常的な商店街。余談だが、柳橋連合市場はかつて、荒岩と恋愛関係のような、そうでないような微妙な関係を持っていた木村夢子とのデート現場になったこともある。


○6巻 cook.57 P65 夢子と商店街デート。これは家の近所ではできまいて……©うえやまとち/講談社

このことからもわかるように、荒岩が日常で利用しているのは家の近所の花椎商店街のほう。どこのお店でも「岩ちゃん」と呼ばれて親しまれ、店主たちが一目置く人気者だ。商店街の店主たちの日帰りスキー旅行に荒岩と息子のまことがシレっとついていくほど親しいつきあいをしている。

荒岩が「本格的なコンソメスープを作りたい!」と思えば一般人なら入手困難であろう牛骨を始め、鶏ガラ10羽分、牛イチボ肉などの希少部位を含む肉数キログラムが電話1本でオーダー可能。しかも数時間後に家まで届けてくれる至れり尽くせりぶり! かなりのVIP待遇。3年通った八百屋で思い切って「白菜を半分にして売ってくれないか」と頼んだら即断られた私からしてみたら雲の上のような話だ。


○51巻 cook.508 P147 荒岩がフラフラなのは二日酔いのため©うえやまとち/講談社

花椎商店街は誰にでもこのように至れり尽くせりのサービスをしているわけではない。しょっちゅう自宅でパーティを開き、大量の食材を買い込む荒岩レベルのお得意様だからこそ、このようなサービスを受けることが可能なのだ。それだけでなく、荒岩がこのような手厚いサービスを受けられるのは、花椎商店街に対して多大な貢献をしているからでもある。

荒岩が生み出す「花椎商店街名物」! 定食屋のメニューも荒岩のプロデュースでランクアップ!

たとえば荒岩御用達の肉屋「小林精肉店」。

荒岩に定期的にビーフジャーキー作りを依頼しているようだ。店主が個人的に「おいしいからまた作って」と頼んでいるだけではない。なんと、荒岩の作ったビーフジャーキーを食べたお得意様がその味に夢中になり、ぜひもう一度食べたいとリクエストがあったというのだ。


○29巻 cook.287 P89 店主のオーダーをふたつ返事でOKする荒岩©うえやまとち/講談社

つまり、荒岩は香椎商店街の隠れた名物をプロデュースしていたのである。一度食べただけでそれほどまでに人の心を魅了するとは、さすがクッキングパパの手作りビーフジャーキー!

このときの小林精肉店の依頼は「材料を提供するからビーフジャーキーを作ってほしい。でき上がったビーフジャーキーの半分は荒岩家、半分は『小林精肉店』の取り分」というもの。小林氏はこのビーフジャーキーを売るつもりなのか、配るつもりなのか……。

そしてその場合、荒岩は手作りのものを不特定多数の人に提供することになるけれど、いろいろな手続きとか、大丈夫なんだろうか……など気になることは山ほどあるが、荒岩と小林精肉店は、まさにビジネス用語でいうところのWin-Win(ウィンウィン)の関係なのだ。

そのほかにも、荒岩が花椎商店街のために提供したメニューはまだまだある。

花椎商店街にあるサラリーマンやガテン系男性に人気の定食屋「きんしゃい屋」でも、荒岩は名物ママに意外な料理を教えている。きんしゃい屋は、昼は定食屋、夜は居酒屋、客のほとんどは男性。きっぷのよいママの作るおふくろの味が人気のお店だ。ママは家庭的な和食ならお手のものなので、荒岩から習うのは普段定食屋では作らないような、海外の香り漂う料理が多い。そのため和の家庭料理中心でもつき出しにフランス南部プロヴァンスの野菜煮込み「ラタトゥイユ」が出てきたり、荒岩の教えた料理が新しい風を吹かせているのだ。


○45巻 cook.446 P82 料理の名前を憶えるのは苦手なきんしゃい屋のママ©うえやまとち/講談社

きんしゃい屋のママは、定食屋でありながら「ロマンチックな気分になれるクリスマスのスペシャルメニュー」を企画しようと荒岩に相談したことがあった。荒岩がママに提案したのはなんと「クリスマス・プディング」。

あの「クリスマス・キャロル」に出てくる、伝統的なイギリスのクリスマスケーキだ。

牛脂やパン粉、タップリのドライフルーツ、スパイスや洋酒などを混ぜあわせ、1ヶ月近く干して作るこのプディングは、スイーツ好きから見てもかなりツウ好みのお菓子。いまでこそ輸入食材店で見かけることも増えたけれど、本格的なものを食べたいとなったらその辺のカフェでお目にかかれるメニューではない。

荒岩、定食屋で「クリスマス・プディング」を出そうなんて、フレンチレストランで納豆定食が出てくるくらいハチャメチャだよ……。と、心配しているなか、博多の片隅のむくつけき男たちが集う定食屋で、クリスマスの日にふるまわれたのである。

私はこのとき「いくら花椎商店街専属フードプロデューサーである荒岩とて、ちょっとこれはどうかな……こんなシブいケーキがガテン系で飲んべえなお客さんに受けるだろうか?」と思っていた。しかし……


○66巻 cook.647 P105・108 神聖な気持ちになる飲んべえたち©うえやまとち/講談社

プディングに火をつけ、美しい炎を見せる演出に、いつものように飲んで騒ぐお客さんたちも静かに見入っている。ろうそくの炎に照らされて、オッサンたちの顔が浮かび上がる様子には一瞬笑ってしまうが、ママの「せっかくのクリスマスに、自分の店のお客さんたちにもロマンチックで幸せな気持ちになってほしい」という気持ちを汲み、お客さんにも読者にも忘れられないインパクトを残す荒岩の料理プランは、ドンピシャだったのだ。

このように荒岩とよい関係を続ける香椎商店街だが、クッキングパパの世界でも時代の波は押し寄せる。

2012年の夏、花椎商店街は「花椎商店街夏祭り」キャンペーンの最中だというのに、閑散としていた。

これだけでも、昔からクッキングパパを読んでいた私にとっては、けっこうショックだった。全国のどの地方都市でも似たようなもので、私の地元駅の商店街も花椎商店街のこの状況をより酷くしたような感じだが、まさかクッキングパパの世界の商店街であっても衰退を免れないとは……。そしてその状況に落ち込む店主たち……見るのがつらい……。



○119巻 cook.1158 P166・167 つらい©うえやまとち/講談社

この続きは有料会員登録をすると
読むことができます。
cakes・note会員の方はここからログイン

1週間無料のお試し購読する

cakesは定額読み放題のコンテンツ配信サイトです。簡単なお手続きで、サイト内のすべての記事を読むことができます。cakesには他にも以下のような記事があります。

人気の連載

おすすめ記事

この連載について

初回を読む
クッキングパパの謎

澁谷玲子

開始から30週年を迎えた『週刊モーニング』の人気連載『クッキングパパ』。ガッチリとした体型としゃくれたアゴがトレードマークの無骨な九州男児・荒岩一味が織りなす、身近な素材を作って作った絶品料理の数々に、ヨダレを垂らしながら読んだ読者も...もっと読む

この連載の人気記事

関連記事

関連キーワード

コメント

doburoku0708 これ面白い! 2年以上前 replyretweetfavorite

komachibypass すげー。リレーション大事: 2年以上前 replyretweetfavorite