チームリーダーは常に平気な顔をする
——IDEOではチューブというシステムを使って、人をアサインするというのは本当ですか?
チューブというのは、社内イントラネットみたいなものですね。とてもよくデザインされていて、メンバーそれぞれが個人のページをもっていて、そこにInstagramやTwitterなどのSNSアカウントが集約されている。大事にしていることや、ぼくの趣味がケーキづくりだとか、そういうことも載っています(笑)。その上で、個人を検索することができる。メンバーの時給もわかります。プロジェクトマネージャーだったら、一人ひとりの時給は利益率に関わってきますから、重要な情報です。プロジェクトからメンバーを検索することもできる。IDEOは人が流動的に動いていて、どんなプロジェクトをやったかがその人の価値になるんです。「あれをやった人と一緒にやりたい」と、いろいろなプロジェクトに呼ばれていくことになる。社内のクチコミで評判が広まることもあります。「サンフランシスコにマーティンという人がいて、彼のデザインは最高なんだよ」と聞くと、一緒に仕事をしてみたいなと思う。
——海外オフィスのメンバーも横断して、チーム編成をすることができるんですね。
そうですね。例えば、ぼくは最近お菓子のプロジェクトに携わっていたのですが、サンフランシスコのオフィスにはフードスタジオがあって、そこにはフードサイエンティストなど食に関するプロジェクトを専門的に扱っているメンバーがいるんです。だから、そこのメンバーに協力してもらいました。
——プロジェクトのメンバーは、それぞれ役割によって集められるんですか?
そのお菓子のプロジェクトだと、プロジェクトリーダー、リサーチャー、コミュニケーション・インタラクションデザイナー。このデザイナーは、ウェブに強い人と紙に強い人、2人に入ってもらいました。
——ぼくはIDEOのオフィスに遊びに行くと、皆さん忙しいはずなのに、いつもたくさんの人が話しかけてくれることに驚きます。他のオフィスで、知らない人にまで話しかけてくれることなんてありませんよ(笑)。
忙しくても、他の人に時間を割くような文化が根付いているんですよね。IDEOには7つの価値観というものがあって、それは「楽観的であれ」「協働せよ」「失敗から学べ」「曖昧さを歓迎せよ」「口よりも手を動かせ」「当事者意識を持て」「他者の成功を助けよ」の7つ。最後の、他者を成功させるというのが、ひいてはチーム全体が成功する、コミュニティが成功するということにつながると考えられている。そう、IDEOは会社というよりはコミュニティなんですよね。あと最初の「楽観的であれ」というのも、チームリーダーは強く意識していますね。要は、どんなに締め切りが迫っていても、大惨事が起きても、平気な顔をするんです(笑)。「たぶんなんとかなる」という姿勢をとることは、社内の雰囲気をすごく良くしていると思います。
——例えばどんなときに?
コンピュータがクラッシュしても、「まあなんとかなるよね」と。実際リセットすれば、元通りになることは多いですからね。あと、ロケハンの撮影でカメラを忘れても、「iPhoneで撮ろう」で終わりです。そこで誰かを責めたり、嘆いたりしても仕方がない。だって、カメラはそこにないんだから。
——そう言われればそうなんですけど、普通の会社だと忘れた人が怒られそうですね(笑)。
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