幸せになる勇気

哲人は明言する。「悩む人間は2つの話しかしない」

歴史が勝者によって編纂されるように、記憶もいまの「目的」によって書き換えられていると言う哲人。過去の「不幸」を口にする人間は、悲劇に酔うことでいまのつらさを忘れようとしている。そして、そのような人間は2つの話しかしないのだと、哲人は話を続けます。100万部を突破したベストセラー『嫌われる勇気』待望の続編『幸せになる勇気』より、第一部を特別掲載いたします。

あなたの「いま」が過去を決める

哲人 受け入れがたい議論であることは事実でしょう。でも、冷静に事実を積み上げていけば、きっと同意していただけるはずです。そこ以外に道はないのですから。

青年 思想の熱にやられて頭が焼き切れてしまったようですね! もしも過去が存在しないのだとしたら、「歴史」とはなんなのです? あなたの大好きなソクラテスやプラトンは、存在しなかったとでも? そんなことを言っているから、非科学的だと嘲笑されるのですよ!

哲人 歴史とは、時代の権力者によって改竄され続ける、巨大な物語です。歴史はつねに、時の権力者たちの「われこそは正義なり」という論理に基づき、巧妙に改竄されていきます。あらゆる年表と歴史書は、時の権力者の正統性を証明するために編纂された、偽書なのです。
 歴史のなかでは、つねに「いま」がいちばん正しいのだし、ある権力が打倒されれば、またあらたな為政者が過去を書き換えていくでしょう。ただただ、自身の正統性を説明するために。そこに言葉本来の意味での「過去」は存在しないのです。

青年 しかし……!!

哲人 たとえば、ある国で武装集団がクーデターを画策したとします。鎮圧され、クーデターが失敗に終わった場合、彼らは逆賊として歴史に汚名を残すでしょう。一方、クーデターが成功し、政権が打倒された場合、彼らは圧政に立ち向かった英雄として歴史に名を残します。

青年 ……歴史は常に勝者が書き換えていくものだから?

哲人 われわれ個人も同じです。人間は誰もが「わたし」という物語の編纂者であり、その過去は「いまのわたし」の正統性を証明すべく、自由自在に書き換えられていくのです。

青年 違う! 個人の場合は違います! 個人の過去、さらには記憶、これは脳科学の領域だ。引っ込んでろ!! あなたのような時代遅れの哲学者が出る幕じゃない!

哲人 記憶については、こう考えてください。人は過去に起こった膨大な出来事のなかから、いまの「目的」に合致する出来事だけを選択し、意味づけをほどこし、自らの記憶としている。逆にいうと、いまの「目的」に反する出来事は消去するのです。

青年 なんですって!?

この続きは有料会員登録をすると
読むことができます。
cakes・note会員の方はここからログイン

1週間無料のお試し購読する

cakesは定額読み放題のコンテンツ配信サイトです。簡単なお手続きで、サイト内のすべての記事を読むことができます。cakesには他にも以下のような記事があります。

人気の連載

おすすめ記事

人生を再選択せよ!ーー100万部のベストセラー『嫌われる勇気』の続編、ついに登場!

幸せになる勇気―――自己啓発の源流「アドラー」の教えII

--- - "岸見 一郎" - "古賀 史健"
ダイヤモンド社
2016-02-26

この連載について

初回を読む
幸せになる勇気

岸見一郎 /古賀史健

『嫌われる勇気』から3年後、教師になった青年は再び、哲人のもとを訪ねる。「アドラーを捨てる」という、思ってもみなかった決意を胸にして。本当に「世界はシンプルであり、人生もまたシンプル」なのか。それとも「アドラー心理学」は現...もっと読む

この連載の人気記事

関連記事

関連キーワード

コメント

koziseren ちょうど今日、前の職場が大々的に打ったチラシを見てしまったところ。今朝これを読まなかったら精神イッタと思う。 >> 約1年前 replyretweetfavorite

hatarou “悪いあの人”と“かわいそうなわたし” 1年以上前 replyretweetfavorite

skbluegreen 今回のずんずん先生の話にもつながるね⇒ 1年以上前 replyretweetfavorite

skbluegreen 耳が痛いわー(^ ^;) でもほんとそう、この2つね⇒「悪いあの人」を非難するか、「かわいそうなわたし」をアピールする。[ 1年以上前 replyretweetfavorite